2部分:第二章
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第二章
その人は言った。自分の会社で雇いたいと。とりあえずギャラはまだ僅かだったがそれでも今こうして寒い街角で歌うよりはずっと
いい条件だった。
「断る手はないよな」
とりあえず即答は避けた。俺達はアパートで話し合った。
「そうだよな」
皆これは同じだった。
「アメリカでデヴュー出来るんだよな」
「夢みたいな話だよな」
「けれど本当のことだぜ」
リードヴォーカルが言った。リーダーは俺だがバンドで一番才能があるのはこいつだった。こいつがいないとうちのバンドは成り立たない程だ。
「俺達アメリカでデヴュー出来るんだ」
「それ目指して来たんだからな。すっげえ運がいいよな」
「そうだよな。だったらこの運逃したらまずいぜ」
今度はベースが言った。
「こんなチャンス二度とないかも」
「それにハンバーガーも好きなだけ食べられるようになる」
ヴォーカルとキーボード両方をやってるメンバーがここで呟いた。見れば考える目をしていた。
「ハンバーガーどころじゃないって」
サックスがそれに突っ込んだ。リードヴォーカルの実の弟だ。こいつの作曲はかなりいい。そのうち兄貴より凄い奴になるんじゃないかとさえ思う時がある。
「ステーキだって好きなだけ食べられるようになるかも」
「そしてこんな汚くて暗い屋根裏ともお別れだよな」
「そうだな」
髭を生やしたヴォーカルの一人が俺の言葉を聞いて天井を見上げた。こいつはギターを持つことが多い。
天井は真っ黒だった。それにあちこちに埃がある。物置のそれと言われても信じられる様な汚い天井だ。
しかしデヴューしたらこんな天井を見上げなくても済む。確かにいい話だった。
「断る理由はないよな」
最後にドラムが呟いた。これで七人の意見が一致した。
「じゃあこれで決まりだな」
俺はメンバーの顔を見回してから言った。
「申し出、受け入れるってことで」
「ああ」
皆俺の言葉に頷いた。
「それでいいな」
こうして決まった。俺達はプロデューサーの申し入れを受けることにした。これで俺達はアメリカでデビューすることになった。
デビューしてからはあっという間だった。俺達は気が付くと録音にテレビの録画にコンサートに大忙しになっていた。今度はファンに囲まれて来る日も来る日も音楽だった。だがそれがよかった。
「何か嘘みたいだよな」
シカゴでのコンサートの後で俺達はステーキハウスに入っていた。その夢だったステーキも今では普通に食べられるまでになっていた。
目の前にTボーンステーキがジュウジュウと音を立てて置かれていた。その横にはサラダやマッシュポテト、そしてコンソメスープにパンがある。アメリカに来た時を思えば夢みたいな食事だった。
リードヴォーカルがそのステーキを目の前にし
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