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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第二章
十七話 傷跡
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「く……うぅ……!」
拳に途切れが無い。
クラナの魔法、加速魔法は、魔導師が、人間としての限界を超える事の出来る手段の一つになる魔法と一つだと、以前ノーヴェが言っていた事を、ヴィヴィオは思い出した。
実際に打ち合って見て、その意味が良く分かる。目の前に居る兄の動きは、明らかに人間離れしていて、まるで早送りの映像を見ているようだ。
ヴィヴィオ DAMAGE 190 LIFE 890
みるみる内にライフが削られて行く。しかもこれでもまだ全力には程遠いのだからより凄まじい。だが……同時にヴィヴィオは、別の事も思い出す。
『そうだ……!』
たたらを踏むように下がるばかりの脚に力を入れて、ヴィヴィオは急制動を掛けると同時にクラナの次の拳に意識を集中する。
突き出された拳を、首を左に反らして寸ででかわす。そのまま……
「はぁっ!」
「……!」
クラナの顔面目がけて拳を打ち込んだ。
『入った……っ!?』
「…………」
一瞬だけ歓喜の表情を浮かべかけたヴィヴィオは、即座にバックステップで大きく距離を取る。
突き出した拳は、掲げられたクラナの左腕に防がれていた。
クラナ DAMAGE 80 LIFE 1640
「…………」
『今のがヴィヴィオさんのカウンターですか……成程、お見事ですね』
『うん……』
表情に出すことなく、念話だけでクラナとアルは互いに意見を交換する。
『全力じゃないって言っても……今のヴィヴィオさんにこのスピードを見切られるとは意外でした。どうしますか?』
『いや……今のまま維持で行く。次にライノがいるのを考えると、残りの使える魔力をあんまり消費したくない』
『了解しました』
相談が終わると同時、クラナは距離を取ったヴィヴィオの事を正面から見つめる。
『凄いな……』
まだ十歳の少女に、これだけ光る物を見るとは思わなかったのは事実だ。
この前の指導の時もそうだが、彼女には本当に色々な意味で驚かされる。同時に……嬉しくもある。
自分を見る、真っ直ぐな瞳。これだけねじくり曲がった男を兄に持ちながら、彼女がこれだけ真っ直ぐに成長したのは、一重に母と、周囲の人々が優しく見守っていたからこそだろう。
彼女の成長と、其れを見守っていた全ての人々に感謝しつつ、クラナは拳を構える。
せめて彼女の真っ直ぐな瞳に、拳では答えられるように。
「ふっ!」
「!」
ぼっ!と音を残してクラナは走り込み、ヴィヴィオの顔面目がけてストレート。ヴィヴィオは左手で防ぎつつ反撃とばかりに右のフックを放つがこれはクラナが上体を反らしたことで空振る。上半身を引いた状態から返す刀で右腕がボディを狙い、腕を空振った事で隙の出来たヴィヴィオにこれがヒットした。
「ぐっ……!」
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