アダルトタイムな、二重奏
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朝食を済ませた俺は、自分の部屋に戻り、手早く身支度を済ませる。
どこに行くのかといえば、今日は一夏の家に遊びに行く予定なのである。
一度行ってみたかった場所だしな。
何てことを思いつつ、目的地に向かうために自分の部屋を後にした。
夏の空にセミの鳴く声が響き渡る。
目の前には横書きで織斑と書かれた表札。
門の前にいる女子の顔がアップで映る。
表札の映す角度を変えつつ、ジャン、ジャン、ジャンと音が鳴り、心臓の鼓動がドクン、ドクンと聞こえくる。
インターホンのスイッチを押すべく女子らしいほっそりとした指先が徐々に近づいていく。
そんなアニメ版の冒頭シーンを俺は思い出していた。
俺が織斑邸に到着してみれば、インターホンをじっと見つめている人間がいた。
俺からは後ろ姿しか見えないが、金髪を首の辺りで束ねているのを見ると、どうやらシャルロットのようである。
シャルロットは自分に何かを言い聞かせる様に大丈夫という言葉を連呼していた。
このまま彼女を観察していてもしょうがないので、とりあえず声をかけてみることにした。
「何が大丈夫なんだ? シャルロット。一夏は家にいないのか?」
俺が声をかけると、
「はうっ」
何て言葉とは思えない声を上げた。
振り返ったシャルロットは、
「驚かさないでよ、アーサー。ところでキミは何でここにいるの?」
気落ちでもしているかのような声でそう聞いてくる。
「何でって、一夏の家に遊びに来たに決まってるだろ? だがまあ、一夏が居ないなら俺は帰るとするよ。持ってきた手土産はシャルロットに預けていくから、一夏が帰って来たら俺が遊びに来ていたと伝えといてくれ」
そう言って俺が持ってきた手土産をシャルロットに渡そうとしたが、彼女の視線は俺には向いておらず、別の方を向いていた。
シャルロットは何を見ているんだ? と思っていると、
「お前ら来てたのか」
背後から声をかけられた。
「おわっ!」
振り替えればそこには一夏がいた。
いつの間に――というか、気配を消して人の背後に立つな。
驚いて思わず変な声が出ちまったじゃないか。
「い、一夏――」
シャルロットは慌てながらこんなことを言い出した。
「ほ、本日は、お、お日柄もよくっ――」
何てことを言っている。
「あー、えっと。一夏、悪いが急に用を思い出したから帰るよ。アイスを買ってきたからシャルロットと仲良く食べてくれ」
「今来たばかりなんだろ、それでもう帰るのかよ。お前、シャルロットに俺んちに遊びに来たって言ってなかったか?」
俺の話を聞いてたのかよ。
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