第四十五話 少年期【28】
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しながら話題を変えることにした。
「珍しいですね、こんな時間に」
「えぇ、今日はちょっと用事でね。リニスと一緒に」
「リニス?」
プレシアの会話から、今1人ではないことに気づく。だが、周りを見渡してもそれらしい人影は見えない。アルヴィンから聞いて、戦闘訓練をしていること、魔法障壁を破る剛腕持ちで、ミッドの界隈を締めているアマゾネスと聞いている人物。エイカはそれを思い出し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「そのリニスっていうのは、あいつといつも闘っているっていう?」
「ふふ、闘いっていうより、遊んでいるように私からは見えるんだけどね」
「遊び…」
穏やかな女性に見えるが、さすがはSランクの魔導師だとエイカは戦慄する。子どもとはいえ、あれほど真剣に闘いに挑んでいる息子の姿を見て遊びとは。それとも、それほどリニスと呼ばれる人物が強すぎて、アルヴィン相手ではお遊びにしかならないのか。どちらにしても、テスタロッサ家の教育事情にエイカは冷や汗が流れた。
「今、そのリニスってやつがいるんだよな」
「えぇ、ほらエイカちゃんの後ろに」
「なにッ!?」
それほどの強者なら手合せぐらい願いたいと考えていたエイカは、プレシアからの言葉に驚愕する。足を洗って1年ほど経つとはいえ、それでも気配には敏感だった自身の感知から抜け出されていた存在。慄く心臓を抑えながら、エイカは勢いよく後ろへ振り返った。
「にゃー」
「……にゃー」
「にゃー」
「…………にゃー」
だんだん声が泣きそうになったエイカ。ねこだよ、紛れもなくねこだよ。なんであいつねこに真剣勝負を挑んでんだよ、とかいろいろ思うことや言いたいことはあったが、エイカはそれらを全て飲み込んで、静かに決意した。
とりあえず、あいつを一発ぶん殴ろう。そうしよう。
なんとか怒りやらなんやらを抑え込んだエイカは、項垂れながら考える。確かプレシア・テスタロッサはアルヴィンの話では科学者で、いつも忙しそうに開発を進めていると聞いていた。それなのに、彼女はこの時間にここにいて、さらにねこまで連れている。散歩……にしては奇妙だ。
そこまで考えて、エイカは前に女子会でアリシアが話していたことを思い出す。デバイスはここにいないが、それでもアリシアたちに、あえて気づかれないような時間帯に出歩いていること。あの時のアリシアの笑顔が、エイカの中に蘇った。
「……そのさ、俺が言うことじゃないかもしれねぇけど。あんまり隠し事はやめてやった方がいいと、思い…ます」
「エイカちゃん…?」
「ずっとヘラヘラ笑ってて、ムカつくんだ。気になるなら聞けばいいのに、怖がって、大好きな人に嫌われたくなくて、押し殺して…。いつも頼ってほしいって思うのに、自分には力がなくて……だから
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