第四十五話 少年期【28】
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本来はいらないはずの通常言語と感情。ますたーのためなら、それらを捨てる選択肢を考えられるが、使っている張本人がこれでいいと言うのなら、コーラルはそれを甘受していた。
己のますたーや家族、その友人や知り合いと語らうことの楽しさ、面白さという感情をコーラルは気に入っている。自身を1人の家族のように考えてくれる、意思を尊重してくれる彼らに、自分は恵まれていると思える心があった。
『やはり、マスターさんの足取りや、何故自分が預けられていたのかは思い出せませんか』
『ふむ。大半の己とマスターの旅のことは思い出せる。だが、後半に行くにつれ、……いや、マスターとあの者が出会った時から記録が不明慮になっている』
まるで意図的に記録を奪われたような感覚だ、とブーフはすでに2人に語っていた。その彼が言う『あの者』という人物のこともわからないらしい。だが、彼は何かしら焦っていた。預けられる直前まで、何かを危惧していた気がすると、記録以外の何かが訴えていたらしい。
その思いが、あの暴走を引き起こした可能性があった。自身が眠りにつく寸前に、無理をして設置しただろう蒐集魔方陣。何が何でも目覚めなくてはならない、という強い思いによって作られた魔法。だが、結局彼は千年以上眠り、目覚めた彼は何も覚えていなかった。それが、ブーフ自身何よりも歯がゆかった。
『ブーフさん…』
『……すまない。先輩に八つ当たりをしても仕方のないことだ』
知っていたことを知ることができない。何かしら理由があろうと、辞書として、記録を司るブーフだからこそのもやもやした気持ち。それをコーラルは、少しだけだが感じ取る。魔導師の補助をすべきはずのデバイスが、満足にマスターの力を発揮させてあげることができない。自身の感情が選び、マスターであるアルヴィンが選んだ選択だとしても、自身が半端なデバイスであることには変わりないのだ。
仕方がないことだ、で終わらせるにはブーフとコーラルの心が許せなかった。だからこそ、己のマスターのために、自身のために、彼らは行動するのであった。
『頑張って見つけてみせましょう。ますたーと僕とブーフさんなら、絶対見つけられますから』
『……先輩は励ますのが上手いな』
『僕のますたーは、抱え込みやすい人ですからね。だから僕まで暗くなってしまったら、ますたーを引っ張ってあげられないでしょ』
『ふむ、一理あるな』
焦らずに、自分ができることを少しずつやっていく。アルヴィンとそして彼らの目標に向けて、それぞれの思いを抱えながら、前へと歩んでいくのであった。
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【未来のみなさんへ】
管理局地上部隊本部の執務室。そこに、地上本部総司令官であるローバストと、アルヴィン・テスタロッサが対峙してい
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