第四十五話 少年期【28】
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を断らせてしまって』
『大丈夫ですよ。施設の利用許可はもらっておきましたし、申請も完了しています。僕がいなくても、マイスターとリニスさんなら問題ないでしょう』
テスタロッサ家のリビングに、緑の宝石と鉛色の本が会話をしていた。地球なら貴様ら付喪神かッ! というぐらいには驚かれる光景でも、次元世界では日常風景に収まってしまうのである。
コーラルとヴェルターブーフは現在、無限書庫で集めてきたデータの整理と、古代ベルカ語の解析にあたっていた。アルヴィンが辞書であるブーフがいれば、鬼に金棒だぜ! と思っていたら、そうでもなかったのが現状であったからだ。確かに古代ベルカ語を読むことはできたのだが、同時に問題もあった。
想像してほしい。まったく知らない言語とその辞書だけ置いておかれて、全文を読めると断言できる根気強い人物が、果たして何人いるか。しかもその辞書が、ところどころ虫食いになっていたら。わからない単語が出たら、その都度文章の繋がりから解釈していかなければならないのだ。
人から蒐集された知識で構成された辞書ということは、その人物が知らない言葉は登録されていないのだ。しかも専門知識であればあるほど、解析に時間がかかってしまう。それでも他に方法がないため、本当に一歩ずつアルヴィンたちは無限書庫を攻略しているのであった。
『すまぬな。己の機能がもう少し有能であったのなら』
『十分すごい機能だと思うのですが…。ブーフさんがいらっしゃらなかったら、古代ベルカ語は諦めるしかないような現状だったのです。だから、自信を持ってください』
もともと日常言語ぐらいがわかればいい、と思って作られた辞書である。無限書庫にある、あらゆる本を翻訳しろ、なんて言う方が無茶ぶりであった。
それでも、ヴェルターブーフは魔術書であり、ロストロギアである古代ベルカ時代の辞書だ。知識を吸収する速度、習得率は常人とは比べものにならないものだった。最初は1冊の本を解析するのに2時間ほどかかっていた時間は、今では30分に抑えられていた。その時間は、徐々に回数を重ねていくほど早くなっていた。
アルヴィンとコーラルによる演算と並列思考を駆使した検索魔法と読書魔法、それに精神リンクをしながら解析魔法をかけて補助するヴェルターブーフ。これが彼らの新たなスタイルとなっていた。
『ふむ、それにしても闇の魔導書と夜天の魔導書か…』
『ブーフさんの時代では、まだそこまで有名ではなかったのですか?』
『おそらく、としか言えん。……やはり、己の記録中枢のエラーが響くな』
機械的な音声ながら、どこかイラついたような雰囲気をコーラルは感じ取る。ますたーのおかげか、父親であるマイスターのおかげか、感情についてコーラルは敏感であった。魔導師の道具として、
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