第四十五話 少年期【28】
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…」
自分でも何を言っているのか、何を伝えようと思っていたのか、わからなくなりぐちゃぐちゃになっていく。エイカ自身、なんでこんなことを口に出したのかわからない。他人の家の事情など、自分には関係のないことなのに。本来ならこれはアリシア自身が言うべきことだと、わかっていた。
それでも、そのサインに気づいてほしかった。自分も……見てほしかったから。それ以上の思いも、言葉も続かなくなり、エイカは唇を噛みしめ、俯くしかなかった。
「……あの子たちに、あなたのようなお友達がいてくれてよかった」
あたたかな言葉と一緒に、エイカの頭に優しい温もりが与えられた。それに驚き、顔を上げて確かめると、自身の頭の上にプレシアが手を置き、ゆっくり撫でていた。まるで陽だまりのようなあたたかさに、既視感をエイカは覚える。もうずっと前になくしたはずの温もりを。
「あの子たちに話してもよかったんだけど、驚かせたくもあったの。2人への誕生日プレゼントのつもりだったから」
「誕生日…プレゼント? え、でも、確か去年からでし、たよね。そんな大がかりなんですか」
「えぇ、そうよ。だって実際は2年、いえもう3年前からになるのかしらね。ずっと前に約束した、大切なプレゼントだから」
プレシアは気恥ずかしげに、それでも真っ直ぐに伝える。このことは誕生日当日まで、プレシアとリニスとコーラルだけの秘密にするつもりだった。だが、友達のために勇気を出してくれたこの子なら、とある程度のことを話すことにしたのだ。
「そう、ですか。……すいません、俺なんかが勝手に聞いて」
「自分のことをなんかって言わないの。それに、私こそお礼を言わなければいけないわ。2人のこと、本当にありがとう」
「……いえ」
アリシアたちに配慮しながら、誕生日までプレゼントのことは2人の秘密ね。そう言って、プレシアは微笑む。少なくともこの母親なら、もうアリシアにあんな顔はさせないだろう、とエイカも小さくうなずいた。
最初にあった緊張の紛れた空気はなくなり、そこには明るくどこかこそばゆくなるような、そんな空間が辺りに広がったのであった。
ふしゃぁァアアアアァァッ!!
キャイン! キャイーン!
一瞬で消え去ったが。
「…………」
「……リニス」
とある1匹の猫が、とある1匹の犬に勝利を収めていた。そこには、犬に追いかけられていた双子の猫たちから、羨望の眼差しを一身に受ける姉御の姿。そんな彼女の後光には、太陽のような光がキラキラと照らしだされているかのようだった。
******
【心からの思いを】
『ブーフさん、どうですか。解析の方は』
『ふむ、悪くはない。しかし、悪かったな先輩。お母上の手伝い
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