第四十五話 少年期【28】
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【打倒ライバルに向けて】
現在俺は、目をつぶり静かに呼吸を整えていた。場所は学校のプールサイド。プールと言えば、夏の代名詞の1つであるが、今は6月というまだ早過ぎる時期である。それなのに俺がこの場所に訪れたのは、迫るやつとの再戦に向けてのトレーニングを積みに来たからであった。
あと2ヶ月で、やつと出会って1年となる。それはつまり、やつと再戦できる日が、刻一刻と迫っていることと同じ意味であった。去年の俺は、やつの前に何もすることができず、蹂躙されるだけで終わった。だが、今回はそうはいかない。去年の俺とは違うのだから。
日頃から日課にしていた手首のスナップの練習、リニスの動きを捉えるために鍛えられた動体視力、リニスの不意打ちから逃れるために鍛えられた気配察知、リニスをもふるために効率の良いワキワキ練習のために鍛えられた指の柔軟性、リニスの……、今思うと、猫でめちゃくちゃ鍛えられているんだけど、俺。
ま、まぁ、過程や方法など些細なことだ。その結果で得られたものが重要なんだから。そう考えれば、俺は頑張った方だと自負している。だてに諦めずに、アマゾネスとタイマンが張れるようになったわけではないのだ。
「濁った水のせいで視界はあまりよくない。だが、それこそやつの紛れ込み擬態戦術を打ち破る一歩。気配を読み、水の流れを見極め、そして……直感を持ってやり遂げる」
俺は柄の部分を軽く握り、右手に持った小型の武器をぐっと構える。左手で身体を支えながら、体重を前へ傾け、臨戦体勢を取った。
1分、2分……と静かに時間が過ぎていくが、俺は焦りを堪えながら待ち続ける。頭から一筋の汗が流れ、ポチャン、とプールに小さな波紋を作った。その時、僅かな音が耳に入り、水の中が動いたのを俺は感じとった。瞬きすらせず、目を凝らした俺はついに捉える。俺の間合いに入ってきた、小さき獲物が作った波紋を見逃すことなく、瞬時に武器を水へ滑らせたのであった。
「……とぉっったぞォォオオォーー!!」
「あっ、大きいのが取れたみたいだね。アルヴィン」
「テンションが低いぞ、少年B!」
「ヤゴ取りでそこまでテンションを上げられる君を、僕はある意味尊敬するよ」
「アルヴィンって、なんでも楽しめるところが羨ましいわ」
おぉ、珍しく少年Bとメェーちゃんから褒められ……、あれ、これ褒められている?
「お兄ちゃん、虫かごを持ってきたよ!」
「ナイスタイミングだぜ、アリシア。記念すべき俺の初ゲットのヤゴをかごの中に…………いっぱい入っているね」
「えっへん」
アリシアが持ってきた虫かごの中には、すでに10匹ぐらいのヤゴが入っていた。この妹やりおる。
アリシアは女の子だが、虫を平気で触ることができる。幼い頃から自然豊か
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