第一章
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ない彼女にモジモジとしながら言おうか言うまいか迷っていた記憶がある。何かを言うのに勇気がいるなんてこの時まで全然知らなかった。
「僕達付き合って結構経つよね」
「ええ」
その言葉に応えたのを今でもはっきり覚えている。彼女と付き合いだしてこの時でもう六年になっていた。学生の頃から付き合ってだからもうかなりのものだった。
「それでさ、あの」
「どうしたのよ」
「もういい頃だと思うし」
何が何かわかりかねている彼女にさらに言った。言葉が詰まって中々出なかったが何とかその言葉を出した。一言がこんなに辛いなんて思いもしなかった。
「今度の六月、教会に行かないかい?」
「教会に?」
「うん、二人で」
心臓が爆発しそうだったのを覚えている。こんなに緊張したのははじめてだった。部活のインターハイも受験の入試の時も。こんなに緊張したことはなかった。自分でも不思議な位緊張していた。
「いいよね」
「それって」
彼女は教会という言葉でようやく僕が何を言っているのかわかった。そう、僕はプロポーズをしたのだ。
「うん、駄目かな」
「え、ええと」
彼女はそれを受けて急に顔を赤くさせた。けれどそれを急に笑顔に変えた。
「あの、私も貴方も」
「うん」
「何て言えばいいかな、ほら」
笑って何かを言おうとする。何か彼女も困っていた。
「もうちょっと待って」
「待ってって」
「ほら、一生の問題でしょ、これって」
「うん」
ここで頷いたのが間違いだった。僕は頷いてしまった。
「だから暫く考えさせて」
「どれ位?」
「考えが纏まったら答えるから。それまでね」
「うん、わかったよ」
誤魔化されてしまったのがわかるがそれでも仕方がなかった。僕はそれに頷いてしまったのだから。そのまま返事はなかった。そして僕はオーストラリアに向かうことになった。
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