第二章 風のアルビオン
エピローグ 夢……
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誰……?
その人の姿は、天蓋の影に隠れて見えなかったが、次第に目が慣れてくると、だんだんとその姿が見えるようになってきた。
あっ! この人……あの時の……
目に映ったのは、以前夢で見た士郎の頭をぶん殴った赤いトレンチコートを着た女性。あの夢の時とは違い、ベッドにいる女性はトレンチコートはおろか、何も服を着ていなかった。
女性は隣に眠る士郎に近づくと、愛しげに士郎の頬をなで、唇にキスをする。
……綺麗……
一枚の絵画のような光景に見とれる。
愛おしげに士郎に触れる女性は、そのシミ一つない白い肌を月の光に照らし、その身体に月の光に照らされ、星空のように光り輝く黒髪を身に纏っていた……その姿はまるで夜の女神のようであった。
この人は……
「士郎……いくらあなたを止めようとしても、きっとあなたは止まらないんでしょうね」
止める? 止まらない?
女性が悲しげに呟きながら士郎に顔に触れると、そのまま士郎の胸に顔を埋めるように士郎の体に両手を回して抱きつく。
「あんたは……鈍感すぎなのよ」
士郎の胸に顔を埋めながら文句を言う女性は、上目遣いに士郎を見上げると、意地悪く笑い、囁きかける。
「私……私達の想いがどれほどのものか……少しは思い知りなさい」
そこまで言うと、女性はくすくすと笑い、目を閉じた。
「士郎……」
月の光が、優しくベッドに寄り添う二人を照らし出す。
女性はまるで母のような優しさを込めた言葉を囁く。
――愛しているわ……
ルイズは惚けたようにその光景を見つめていた。
この光景は、どこか現実味の無い物語のような光景だった。だからだろう、士郎が好きだと自覚したにも係わらず、この光景にルイズは嫉妬の気持ちが浮かばない。
ただただ、士郎を思う女性の姿に見惚れていた。
この人、本当に士郎が好きなんだ……でも……でも、わたしだって……っ
目が覚める前兆なのだろうか、段々と薄れゆく士郎に近づくと、女性と寄り添うように眠っている士郎の頬に手を伸ばした。
触れることが出来ない手で、士郎の頬を撫でるように動かすと、ルイズは消えゆく士郎にゆっくりと顔を近づける。
でも、でも……わたしだって……
そして、士郎の唇に自分の唇を合わせた。
わたしだって……
ゆっくりと唇を離したルイズは、士郎の耳元に顔を近づけると、自分の気持ちを思いっきり込めて囁く。
好きよ、シロウ……
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