第二章 風のアルビオン
エピローグ 夢……
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開いた士郎は、スッと目を細めてルイズを見下ろす。ルイズは見下ろしてくる士郎に対し、顔を俯きながら話を続けている。
「一つはわたしに命を救われた借りで、もう一つは元の世界に帰れない理由があるからだって……」
「……ああ」
「あの矢……あの力が、もう一つの理由」
「……」
「違うの……?」
「……」
「っ……やっぱりいい」
何も答えず黙ったままの士郎の様子に、ルイズは立ち上がり士郎から離れようとしたが、いつの間にか士郎に左手を掴まれたことにより、立ち上がることが出来なかった。
「し、シロウ?」
ルイズは戸惑った声を上げ、掴まれた左手を赤くした顔で見つめると、上げていた腰を再び下ろした。そして、再び士郎と背中合わせの状態になると、士郎がルイズに話しかけてきた。
「色々あるんだ……色々……俺が元の世界に帰れない理由は……な……」
「ふ〜ん……」
ルイズのどこか納得していないと言うような相槌に苦笑しながら、士郎は使い魔のルーンが刻まれた左手を見つめる。
「後悔はしてない……ルイズの使い魔になったことは……」
「うん」
ルイズと士郎の間に沈黙が満ちる。
聞こえるのは遥か遠くに聞こえる砲撃の音と破壊音……そしてシルフィードの風を切る音。
俺は……何か出来たのか……
チラリと背後を振り返り、ルイズ達を見た後、空を見上げる。
それとも……何も出来なかったのか……
自分の中の何かが削られていくのを感じたが、自分に寄りかかり眠るルイズを見下ろすと、自然と浮かんできた苦笑を顔に浮かべ頬を掻く。
……救えたものも……ある……か……
士郎が苦笑を浮かべている中、ルイズは士郎の背中に寄りかかっているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
……これは……夢……
いつの間にかルイズは広い部屋の中にいた。部屋の中には木目調の重厚な机や、壁に豪奢な絵画が飾られるているなど、どこか貴族の屋敷の一室を思わせる部屋だった。
そんな部屋の真ん中には、大人が五、六人広々と眠ることができるほどの大きさのある、天蓋付きのキングサイズのベッドが置かれている。
ルイズが部屋の様子を眺めていると、ベッドに眠る人の顔が、窓から差し込む月の光に照らされて浮かび上がった。
月の光に照らされたのは、使い魔の士郎であった。
ベッドに眠る士郎は、穏やかな顔をして、まるで子供のような顔で眠っていた。
ん〜んふふ、可愛いな。いつもわたしが先に眠っちゃうから、シロウの寝顔、見たことなかったのよね。
ベッドに眠る士郎を良く見ようと近づいていくと、ベッドに士郎以外の人がいることに気付き足を止めた。
えっ……
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