四幕 〈妖精〉
5幕
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
?」
「うん。この力が少しでもフェイの助けになりますように、って」
こんなふうに、とフェイはルドガーの腕を抜けると、ふわりと宙に浮いた。そのまま風船みたく飛ばされて行きそうで、ルドガーは慌ててフェイの両腕を掴んで引き留めた。
「どこにいても〈あの人〉がくれたコレがあればコワイことなかった。フェイ、魔法使いになったみたいだった。黒匣がなくても算譜法が使えたんだもん」
とん。軽やかな音を立ててフェイは地面に戻って来た。
「コワイ人もキモチワルイ人も、おっきなモンスターも、だあれもフェイには勝てないの。でも、そしたら、今度はダレもフェイに近寄ってくれなくなった。ごはんもくれなくなった。おふとんで寝かせてくれなくなった。しばらくひとりで隠れてたんだけど。そしたら政府の人が来て、フェイをヘリオボーグの基地に連れてって。イロイロ検査とかして、フェイは外に出ないことになって。〈温室〉で暮らして。いつのまにか〈妖精〉になってたの。それからは、特になんにもなくて、毎日ボーっと過ごしてたんだけど」
その日を思い出してか、フェイは目を伏せる。
「リーゼ・マクシアと戦争するって。声が聴こえた。たくさんのオトナがフェイを使いたいって」
「ヘリオボーグの人間がそう言ったのか?」
「ううん。電波に乗ってたら分かるよ。電気はヴォルトのオン…ケイ? だから。どんなことでも、どこであっても」
「それも〈妖精〉の力か――」
「おばちゃんはフェイを『兵器になんかさせない』って言ってたけど、本当はどっちでもよかった。わたしにとっては、エレンピオスもリーゼ・マクシアも同じ〈お外〉のヒトたちだから。どっちになるか決まるまで待ってたら、急にフェイは〈お外〉に出ていいことになったの」
断界殻の解放に伴ってフェイは釈放された。親元に帰されることなく、エルとも再会できず、ただのフェイ・メア・オベローンとして生きていけと一方的に決められて。
その不条理を、フェイ自身は知っているのだろうか。それとも、ただ受け容れ、不条理と思うことすらやめてしまったのだろうか。
考えていると、とん、と。今度はフェイのほうからルドガーの胸板に頭を預けてきた。
「最初にルドガーに会った時、パパが迎えに来てくれたのかと思った。そんなわけないのに。そんなわけ、絶対ないのに――」
「俺はそんなにフェイのパパに似てる?」
「似てる、じゃない。同じ」
「前にも言ったな、それ。どういう意味なんだ?」
「……上手く言え、ない。同じだって、思うの」
フェイの表情は怯えに近かった。言葉にするなら「ちゃんと言えなかったから怒る?」という感じだ。
そんな感性しか持たないこの子が、ルドガーにはひどく不憫に感じられた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ