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Fate/magic girl−錬鉄の弓兵と魔法少女−
無印編
第三十二話 崩壊の始まり
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消えた。
「なっ! その剣は士郎の物か」
「フェイトの使い魔が落していったものだけどなかなかに役に立つわ。
そういうあなたの盾もあの魔導師の物じゃないの?」
あの盾も、この剣と同じように異質なものだ。
少なくとも魔導師が使うデバイスの類ではないのは間違いない。
それにしても長くは持たないわね。
魔力はともかく体力が続かない。
一気に片をつけないと
再び魔法を発動させようとした時
私と執務官のほぼ中間位置にゆっくりと降りてきた者がいた。
フェイト? なぜ?
と疑問に思うも、戦闘の緊張が切れ、激しく咳き込み再び吐血する。
「母さん」
こちらに走ってこようとするが私と目を合わせるとフェイトの足が止まってしまう。
……今まで虐待をしてきたのだから仕方がないのかもしれないわね。
「まだそう呼ぶのね。いえ、何をしに来たの」
「あなたに言いたい事があって来ました」
虐待してきた私に向けられた瞳。
意外にもその眼には怯えもなく、憎悪もない。
ただ静かに私を見据えている。
「私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが作ったただの人形なのかもしれません」
あなた。
フェイトにそう呼ばれた時、胸が痛んだ。
違う。病のせい。フェイトがあなたと呼んだ事は関係ない。
「だけど私は、フェイト・テスタロッサはあなたに生み出してもらって、育ててもらったあなたの娘です」
「……だからなんだというの?
あなたの事を娘と思えというの?」
フェイトの姿がアリシアとかぶる。
違う。
吐血のせいだ。
血が足りてなくて目が霞んでるだけ
「あなたがそれを望むなら、私は世界中の誰からもどんな出来事からもあなたを守る。
私があなたの娘だからじゃない。
あなたが私の母さんだから」
眼からまた何かが溢れた。
その正体が涙という事に初めて気がついた。
どうやらあの魔導師の言うとおりだったらしい。
アリシアの死を受けれる事が出来ず、フェイトを拒絶し続けた。
その結果がこれだ。
「……本当に愚かね」
アリシアの妹、私のもう一人の娘、フェイト・テスタロッサ。
アリシアのコピーでも偽物でもない。
フェイトという名の私の娘。
大切で手に届く幸せがすぐそばにずっとあったというのに私はその手を払い続けていたんだから
「いつもそうね。いつも私は気付くのが遅すぎる」
「母さん?」
私の独白に困惑の表情を浮かべるフェイト
出来る事ならフェイトがもっと大きくなる時まで一緒にいたかった。
今まで辛くあたった分、優しく抱きしめてあげたかった。
でも……その資格はもうない。
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