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久遠の神話
第六十二話 十二時の決戦その五

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「出来るだけな」
「命は奪わずに」
「戦いを止める」
 彼の任務、そして願いを適えるというのだ。
「そうさせてもらう」
「そうですか、じゃあ」
「俺達は倒す為に戦っていない」
 このことが確認される、彼等が何故剣士として戦うのか、このことを今四人で再確認する意味もあって言ったのである。
「止める為だからな」
「ええ、ですから」
「命は求めない」
 工藤はあらためて言った。
「全員ここで戦いから降りてもらうだけだ」
「若し僕達が生き残れば」
「一人だけ残って後は降りるってことでね」
 高橋が言って来た。
「そういうことでね」
「誰か一人が残ればいい」
「その一人が戦いを終わらせるってことでね」
「それで行こう」
「打ち合わせ通りに」
 大石が微笑み二人の言葉に応えた。
「そういうことで」
「そうなるな」
「はい、では」
 四人でこのことも確かめ合った、その中で。
 上城は今ふと思った、それで工藤と高橋にその思ったことを問うたのだった。
「あの、そういえば」
「何だ」
「工藤さんと高橋さんはそれぞれ戦いを止めようとされていますね」
「見ての通りだ」
「自衛官、それに警察官として」
 二人の職業のことも話に入れる。
「そうされていますけれど」
「俺達の願いはないか、か」
「はい、中田さんも高代先生もご自身の願いの為に戦われてますから」
 だが二人は何故違うのか、問うのはこのことだった。
「お二人に願いはないんですか?」
「ある」
「俺もね」
 二人は上城の問いに同時に答えた。
「俺達も人間だ」
「欲ってのはあるよ」
「それを適えようとは」 
 思わわないのか、二人に問う顔を見せる。
「思われないんですか」
「俺個人の願いは何でもないものだ」
「俺もなんだよ」
「何でもないんですか」
「精々給料が上がって欲しいというところか」
「早く結婚したいね」
 二人は少し苦笑いになってこうそれぞれ言った。
「そんなところだ」
「だからなんだ」
 剣士としてもだというのだ。
「誰かを倒して手に入れるものじゃない」
「そもそもそういうことって好きじゃないんだよ」
 他人を倒してまで何かを手に入れる、二人はこのことも否定したのである。
「そういうことだ」
「そうなんだよ」
 こう話す、そしてだった。
 上城も彼のその話を聞いてまた言ったのである。
「自分で適えられることなんですね」
「そして適えられないのならだ」
 その場合については工藤が話した。
「諦めることだ」
「そうなるんですね」
「もっともそれがわかっていても出来ない場合もある」
「中田さんがそうでしょうか」
「おそらくな」
 工藤はこう予想していた。
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