第19話「惚れ薬」
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る少女にお母さんはため息をついて微笑んでみせる。こういった娘の愛らしい仕草もまた母にとっては嬉しいものなのだろう。その目には優しさがありありと見て取れる。
「帰ったら、お母さんのお料理手伝ってくれるんでしょう?」
「あ……うん!」
途端に元気が良くなった。家に出る前からの母との約束を思い出したのか、顔を嬉しそうに咲かせて母の手を握り締める。
「はやく、かえろうよ!」
「はいはい」
手をつなぎ、仲良く帰る二人の母子。どこからどう見ても幸せそうで楽しそうなこの親子はそのまま人ごみに紛れて帰宅するのだった。
そして
チョコレートが一悶着を引き起こす。
「ばれるとオコジョなので僕のことは……」
「わかってるよネギ先生」
「私達口堅いアルよ」
三人の生徒達とスターブックスカフェにて鉢合わせたネギが京都での口止めを頼んでいた時のことだった。
クーとマナの了承を得たが、なぜか楓からの返事がない。不思議に思った全員が彼女の顔を見つめると、見つめられた当の本人は突然顔を赤らめた。
「……!?」
「どうかしましたか、カエデさん。具合でも――」
心配しようとして、だが最後まで言い切ることは出来なかった。
「――好きだぁぁあ!!」
「んなっ!?」
まず楓が素っ頓狂な声を漏らした。
「「「「は?」」」」
次いで、ネギたちが。
聞き覚えのある声に誰もが耳を疑った。顔をむけ、さらに目を疑った。一斉に誰もが見つめたその視線の先。
あの大和猛が顔を赤らめ、楓を見つめ、叫んでいたのだ。
一目で心臓が揺れた。顔が赤くなる。ずっと見つめていたい。目が離せなくなる。高鳴る気持ちが抑えきれない。
――落ち着け、俺。生徒と先生の間柄でそんな関係になるなど。
『教師だから、とか。生徒だから、とか。姉の言葉とか、自分が英国紳士とか……そんなことは全て忘れて、お前自身はどう思っているんだ。お前自身の気持ちは……どうなんだ?』
ドクンと一際大きな鼓動が胸を打った。
京都での修学旅行、宮崎さんに告白されたネギに彼自身が伝えた言葉だ。
――い、いやしかし。
思いが抑えきれずに暴走を始める。俺にとってはじめての感情はやがて収束を始め、一つの気持ちへ固まっていく。
――そうか。
固まった「思い」は「想い」へと変化を遂げる。
――これが、恋か。
「……好きだ」
自分が壊れているということはもうとっくに理解していた。最早ガンツのミッション以外では滅多なことですら熱くならないはずだったのに、この熱い気持ちは止まらなかった。まだ目が合っている長瀬さんに呟く。
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