Introduction
第三話 邂逅
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「あら、遅かったじゃない」
楯無さんはそれまで読んでいた本を閉じながら、扉を開けた僕に言葉をかける。
今日一日だけでどれだけ彼女に振り回されたかわからないが、その中でもこれが一番の衝撃。
……最悪だ、よりにもよって彼女と同室となってしまったようだ。
「なに固まってるのよ、入れば?」
しまった、さすがに今回は動揺を隠せなかった。
「ごめんなさい、同室が楯無さんだと思わなかったから驚いてしまいました」
まぁ、嘘ではない。誤魔化せるかは微妙だけど。
何にせよこうして同室となった以上、なんとかするしかない。
「ふふ、私は知ってたけどね。改めてよろしく、紫音ちゃん」
「はい、よろしくお願いします、楯無さん」
どこまでも掴めない人だなぁ。気付けば扇子を開いている。そこには『歓迎』の二文字。SHRの時は自分の名前が書いてあったけどいくつ持ってるんだろう?
正直、僕に後ろめたいことがなければ彼女のことは人間的に嫌いではない、それが僕がこの一日で感じた彼女の印象だ。当然暗部の当主ということもあり、自身の印象操作には長けているだろうから一概には信用してはいないが。
「しっかし、さっきも思ったけど紫音ちゃんって典型的なお嬢様よねぇ」
「そ、そうでしょうか?」
いきなりの問いかけにちょっと狼狽えてしまった。
どうしても何気ない会話にも探りを入れられている気がして落ち着かない。でも、そもそも何が探りかなんて彼女相手では恐らく考えても無意味だ。無警戒になろうとは言わないけど、慣れるしかないかもしれない。
「西園寺という古い家で過ごしましたし、環境でしょうか」
「それを言うなら私だって、一応『更識家』っていう名家の当主なのよ?」
『更識家』は、表向きは代々続く名家と認識されている。
それを考えれば確かに、彼女は『らしく』ない。いや、名家の生まれが皆そうかと言われれば違うと思うし、僕の周りがたまたまそうだっただけだが。それでもお嬢様というイメージから楯無さんはかけ離れている。
「む、なんか失礼なこと考えたわね。どうせ私はお嬢様らしくないですよ〜」
あれ、また心読まれたよ。おかしいな、千冬さんといい楯無さんといいこの学園では読心術は標準装備なのだろうか……ってそんな馬鹿な。ということは僕が顔に出ている……?いや、昔から無表情だって言われてたしポーカーフェイスには自信がある。となるとやっぱりこの二人が異常なんだよね、うん。
「そんなことないですよ。それが楯無さんの魅力でしょうし、私はそちらのほうが好きですよ」
これは本音だ。僕みたいな作り物の話し方よりはよっぽど好感がもてる。
お嬢様口調の楯無さんとか想像できないし。
「そ、そう? 面と向かってそうい
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