第5話:ハイジャック事件−5
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いるんでしょうか?」
「いえ。 今のところは表立った動きに変化はありませんね。
とはいえ、現地で飛び交っている流言の類を独立派が流しているという
話もありますから、目に見えないところでの活動は活発化してるかもしれません」
「普通の住民たちの様子はどうですか?」
「概ね独立派に同調する意見と、管理局を擁護する意見が半々ですね。
ただ、治安の悪化に伴う犯罪の増加で住民の不満は高まりつつあるようなので、
治安を担っている管理局の立場は悪くなっています」
「そうですか・・・」
ゲオルグはそう呟くと、腕組みをしてジッとテーブルの上のグラスを見つめる。
しばらくして腕を解くと右手の人差し指でグラスの縁をゆっくりとなぞる。
そしてゆっくりと顔を上げると、ネオンの顔を見た。
「マズイですね。
管理局の治安維持に対する不満が高まっているのもそうですが、
独立派への支持が高まっていることはもっと問題です」
「なぜですか?」
「独立派を支持する市民によってテロ実行犯が匿われる可能性があるからです。
そうなってしまえば、我々がテロを防止するのは非常に難しいですね」
ゲオルグがネオンの質問に答えると、ネオンは神妙な顔で頷いた。
「なるほど。 確かにそれはマズイですね。 どうされますか?」
「まだ最悪の状況には程遠いですから、落ち着いて考えますよ。
慌てて介入すればヤブヘビになりかねませんしね」
微笑を浮かべてそう言うと、ゲオルグはちらりと時計に目をやる。
「もうこんな時間ですね。 そろそろ出ましょうか」
「そうですね。 今日はありがとうございました」
頭を下げて謝辞を述べるネオンに向かってゲオルグは首を横に振る。
「いえいえ。 お互い様ですよ」
そう言ってゲオルグはニコッと笑って席を立つ。
そして部屋のドアを開けると、ネオンのほうに顔を向ける。
「お先にどうぞ」
「あ、すいません。 失礼します」
ネオンは軽く頭を下げながらゲオルグの前を通ってドアを抜けていく。
ゲオルグもネオンに続いて部屋を出る。
2人が入った時よりも少し混んでいる店内を抜けて2人は店を後にした。
階段を上がって路地に出ると、3月のまだ冷たい夜風が2人の髪をなびかせる。
「やっぱり夜はまだまだ冷えますね」
「そうですね。 でもこの辺はまだ風がそこまで強くないから、
港湾地区なんかに比べるとまだましですよ」
肩をすぼめて寒そうに歩くネオンの言葉にそう答えながら、
ゲオルグの方もぶるっと身を震わせる。
「ところで、ネオンさんはどうやって帰られますか?」
「電車ですね」
メインストリートへ出る直前、ゲオルグの質問に
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