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特殊陸戦部隊長の平凡な日々
第5話:ハイジャック事件−5
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作り背筋を伸ばす。

「ランスター執務官」

「えっ!? あ、はい!」

突然かしこまった呼び方をされたティアナは、一瞬返事につまる。
ゲオルグはそれには構わずピンと背筋を張ったまま話を続ける。

「貴官は本年4月1日付けで当特殊陸戦部隊へ異動となる。
 役職は部隊付きの執務官だが、合わせて4月から4つに増える分隊のうち
 1個分隊の分隊長も任せるつもりだ。
 ただし、分隊長については貴官の指揮官としての資質を確認する機会を設けるので
 その結果を持って決定する」

硬い表情と硬い口調でそこまで言うと、ゲオルグはふっと表情を緩める。

「というわけで、ティアナは4月からこの特殊陸戦部隊の仲間入りってわけだ。
 ちょっと早いけどよろしく頼むな」

ゲオルグはソファから腰を浮かせてテーブルを挟んで反対側にいる
ティアナのほうに手を伸ばす。
だが、ティアナのほうはゲオルグの言ったことの意味をつかみ損ね、
ゲオルグが差し出した手をぼんやりと見ていた。

「おーい、ティアナー」

ゲオルグがティアナの顔の前で手を振ると、ティアナは夢から覚めたように
フッと我に返る。
だが、その表情は冴えない。

「あの・・・ありがとうございます」

「どういたしまして」

微笑を浮かべて言うと、ゲオルグは差し出した手を引っ込めて
ソファに深く腰を下ろす。
そのまま黙ってティアナの顔に目を向けていると、伏し目がちな表情のままの
ティアナがゆっくりと口を開き始める。

「あの・・・光栄なことなんですけど、私でいいんですか?
 執務官としての経験もまだまだ浅いですし、指揮官の経験はないですし」

暗い表情で言うティアナに向けて、ゲオルグは鋭い目線を送る。

「嫌なら辞退して構わないぞ」

ゲオルグが少し低めの声で言うと、ティアナはハッと顔を上げてかぶりを振る。

「嫌ではないです! むしろ声を掛けていただいて嬉しいです。
 ですけど、その・・・自信がなくて・・・・・」

そう言って俯くティアナを見て、ゲオルグは小さくため息をつく。
そして再び腰を上げ、ティアナの頭に手を伸ばす。

「大丈夫だ。 お前ならきちんとやれるさ。
 お前の力は俺が一番よく知ってる。 だから大丈夫だ・・・」

優しい口調で放たれるゲオルグの言葉に、ティアナはゆっくりと顔を上げる。

「ゲオルグさ・・・」

そしてゲオルグの顔を見たティアナは発しかけた言葉を飲み込んだ。

「・・・とでも言って欲しいのか? 甘えんな」

そこにあったのは優しく微笑む顔ではなかった。
眉間に皺を寄せ、自分を睨みつけるように見下ろす顔だった。

「俺が求めてるのは優秀な魔道師であり、優秀な執務官だ。
 
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