Introduction
第二話 ルームメイト
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「西園寺、ちょっと来い」
最初のSHRが終わり、次の授業までの少しの時間で千冬さんに呼び出される。
丁度良かった。彼女にとって不本意だったかもしれないが、僕にとってはこの学園における唯一の味方でありこれから多大な迷惑をかけることになる。一刻も早く直接話がしたかったから。
案内された誰もいない宿直室で千冬さんと向き合う。
「お久しぶりです、千冬さん……失礼、織斑先生」
「ああ、学園ではそう呼べ、西園寺。……しかし、お前の家も束も無茶をする、こっちの身になれ」
そう言いながら軽く出席簿で僕の頭を叩いた。
むろん、力は入っていないので全く痛くはない。本気で叩かれたら出席簿が砕け散るか頭蓋骨が陥没するかだろう。
そんなことを考えていたらちょっと睨まれた。……まさか心が読める?
「……申し訳ありません」
とりあえず千冬さんの言葉、心の中の言葉、どちらにともとれる形で謝っておく。
「一番の被害者はお前自身だろう。不本意ではあるが何かあったら頼れ、だが極力問題は起こしてくれるなよ。お前なら大丈夫だと思うが……くれぐれも問題を起こすなよ」
幸い僕の謝意は前者で受け取ってくれたようだ、頭蓋骨陥没は御免だから、うん。あ、だから睨まないで……。
それにしても二度目の忠告は言外にいろいろ意味が込められている……よね。
当然か、教師も生徒も全て女性という環境の中に男が一人、しかも女装して。というよりそもそもこの状況が既に問題だ。千冬さんが言いたいのは、この状況をいいことに生徒に手を出すな、ということだろう。僕なら大丈夫というのは信頼されてるのかヘタレだと思われているのか、前者だと信じたいけどたぶん両方だろうな……。
「心得ています、これからご迷惑おかけしますがよろしくお願いします」
「……ところでその口調はどうにかならんのか?」
「やっぱ変かな? 僕の周りの女性がこんな感じだったからどうしても。それに一応名家のお嬢様だったからね、紫音は。そう思ってこの口調にしたんだけど……この学園だと逆に浮いちゃったかな、失敗したかも」
自己紹介のときの喧噪を思い出して嘆息する。
今まで女性に理想を抱いていたわけではないが、習い事や稽古事で僕に指導する人や女中などはやはり御淑やかなお嬢様だったり淑女だったりするわけで。唯一の例外は束さんと千冬さんだが。
通っていた学校の生徒、教師などは印象にも残っていない。特に何かを話すことも無かったし、こちらも聞くつもりもなかった。
そんな環境故かどうしても僕の中の女性というのはこういう話し方、という固定概念があったようだ。
「まぁ、今更変えても怪しまれるだろうしボロが出る。やりやすいようにしろ」
「わかりました、ありがとうございます」
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