彼は知らぬ間に求められる
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人で話しながら歩く。二人して同じ人を心に想いながら。
戦の最中に話す事ではないけど、そんな話をしてか私の心は少し軽くなった。
†
目の前にいるこの女は同類。全てを犠牲にしても守りたいモノがある異端者。
「諸侯の邪魔をするのは大変だったんですよぉ? なのに結局華雄さんを劉備軍にとられちゃうなんて」
間延びした声で語る七乃はずっと緩い雰囲気を崩さずこの調子だった。責めているのに責めていない。こういう可能性もあると考えていたんだろう。
「仕方ない事。華雄が思ったより強かっただけ。今、明の名を上げるわけにはいかない」
「ですよねー。まあ、こちらも孫策さんの名が上がるのを抑えられましたからいいですけど」
口を尖らせながら言う彼女の真意は分かっている。
「……何か助けが欲しかったら言ってほしい」
「ああ、じゃあ次の戦で私達に先陣を任せてほしいですね」
これはこちらの失態の埋め合わせ。孫策には同情するが。
「わかった。本初の説得は任せて」
「頼りにしてますよ?」
「ん、そういえば公路は?」
「利九ちゃんに任せてます。あの子も過保護ですから」
紀霊もあなたにだけは言われたくはないだろうに、とは思うがさすがに口には出さない。
「なら安心。他に問題点とかある?」
「当面は大丈夫ですねぇ。今後の動きが夕ちゃんの予想通りに行くとしたら……ですけど」
あの欲にまみれた上層部の考えることくらい分かる。
「問題ない。董卓は逃げるしかなくなる。洛陽の民には気の毒だけど」
「……腹黒ここに極まれり、ですね。よっ、この悪徳幼女」
「それ、褒めてない。それに私は背が低いだけで胸は大きいから幼女じゃない」
「ええー、こんなに可愛いのに……」
しゅんとしながら頭を撫でられるが悪い気はしない。目を細めてしばらくそのままいたが止めないとずっと撫で続けそうなので彼女の手を頭からゆっくりと降ろす。
「そろそろ時間。公孫賛と揉めてる本初を止めないといけない」
「いけず、じゃあ一回抱きしめてもいいですか?」
「それはだめ」
「夕ちゃんのけちんぼ。……ではまた何かあったら来ますね」
そそくさと用意して天幕を後にする七乃。同類とはいえ毎回気が抜けない。彼女はこちらさえも完全には信じていないのだから。正直、一番敵に回したくない相手だ。
「明、ありがと」
そう言うと天幕の後ろ側から明がひょこっと顔を出した。
「気にしないで。それにしてもいつもいつもしつこいよ、あの褐色猫狂い」
うざったそうにポリポリと頭を掻いて語ったのは周泰の事だろうと分かった。また性懲りも無く諜報に来てたのか。
「追い払えた?」
「お互いの実力分かってるからね。最近はあたしが見つけたら帰ってくよー」
それは明がいなければ情報は簡単に抜けるという事
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