貴方はそこにいるんですか?
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け…落ち着くんだ…此処は…俺の墓…唯それだけの事だ、落ち着け…」
キョウスケは悪い冗談から覚めたいかの如く大きく深呼吸をして落ち着く、そして何故懐かしく感じるのか理解出来た。ここは自分が産まれた世界だ、ここで自分は育ち、生きて死んだ世界だ。それなら懐かしいと思ってもおかしくない。キョウスケは何故か花を作り出し、それを供えることにした。そして手を合わせた。
「(何を俺はやっているんだ…。この世界で死んでいる俺は俺だ、その俺は死んだ後に転生し神となって今此処に居る。なら、俺の祈りは何処に行くんだ、俺自身へと向く事になるのか?良く解らんものだ、元人間となった神の心とやらは…)」
キョウスケはそのような事を考えながら祈り続けた、何故かは解らないが祈りを続けた。神としてではなく、この世界で生きた元人間として。そんな祈っている最中、足音が聞こえた。それと水の音も聞こえた事からして墓参りに来たものだろうか。その音はキョウスケの後ろで、止まった。
「あの…どなたでしょうか…?」
「……何、少し世話になった奴の墓参りだ。妙な縁でね、少しばかり祈りたくなってな」
声からして女性だ、キョウスケは立ち上がりながら振り返った。移動しようとした時、女性の顔を見た。その時、キョウスケは本能的に時を止めてしまった。キョウスケはそのまま女性の顔を凝視した。否せざる終えなかった、その女性は日本人らしい黒髪をしている、肩ほどまでに伸ばされていた。肌の色は色白でとても美しい、顔つきは可憐というよりも凛々しくが幼さが残るという印象を受けた。キョウスケは彼女に覚えがあった、否忘れる事など出来る訳が無かった。生前、この世界で人間として生を受け、幼い頃に出会い、笑顔で笑いあったあの頃、お互いを意識し、交際し、将来を共にする事さえお互いに決め合っていた仲だった青年期。自分の初恋の相手であり、自分が始めて家族以外で愛した女性、『加賀見 千夏』だった。
キョウスケは正気に戻ると、自分が時を止めていると認識、落ち着いてから時を動かした。
「あ、ああ…ま、まさか……恭介…君なの…?」
「人違いだな、俺は南武 恭介ではない」
「そ、そうか…そうだよね…彼はもう死んだし…」
千夏はキョウスケに謝ってから、自分も花を供え、線香に火を付けた。
「恭介君、事故で亡くなったんです。道路を渡っている時に躓いちゃって、そこへトラックの荷台にあった荷物が落ちて来て……」
「…そうか」
キョウスケは自分の死に様がそのようなものであると聞いて、顔を背けた。本当はエクナがカッターを落としてそれが直撃して、死んだとはいえないからだ。この世界ではそのように死んだ事になっているのだろう。千夏はキョウスケの墓を丁寧に拭き始めた。
「ここには良く来るのか」
「ええ、週3で来
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