第四十一話 次なる難題
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ザーン商人もそれが分かるから買おうとはしない。利益を出そうとすれば薄利多売、利幅は少なくても量を多く売る事で利益を出すしかない。だがそのためには耕作地を増やす、つまり機械化を徹底的に図る必要が有る。それと大型輸送船を持つ商人の協力が必要だ」
「……」
エーリッヒ様が首を横に振っている、実現するのは難しい事なのだろう。
「小麦は保存が可能だ、それに主食でもある。それでさえ輸出が難しいとなれば他の生鮮野菜はもっと厳しい。領内で加工するか、或いは鮮度を保てる輸送船を用意するか……、どちらにしろコストが嵩む……。だからどうしても農業には力を入れなくなる。力を入れるのは鉱山などの利幅の大きい産物になってしまう」
そうなんだ、そんな事になってしまうんだ。驚いたけどきちんとエーリッヒ様が話してくれたことが嬉しかった。
「カストロプはオーディンから近い。本来なら大消費地であるオーディンに近いのだから位置的には優位な筈だが……」
「義父上、その優位を生かし切れない、それが帝国の現実です。人口が減少しつつあることも良くありません。食料を必要とする人間が減っているのですから」
エーリッヒ様の言葉にお父様もお母様も黙ってしまった。
「このまま人口が減り続ければ有人惑星の放棄という事も有り得るでしょう。行き着くところは……」
お父様とエーリッヒ様がお互いに顔を見合っている。二人ともとっても怖い顔、お母様を見たけどお母様も怖い顔をしている。
「それ以上は言うな、エーリッヒ。言ってはならぬ」
「口を噤めと言われますか、しかし十年後、二十年後は分かりませんが五十年後には皆が口に出すようになります。その時ではもう遅いという事も有り得るでしょう」
お父様が大きく息を吐いた。
「お前は先が見え過ぎる、そしてそれを口にしてしまう、困った奴だ。人口減少が続けば帝国が崩壊すると言うのだろう、歯止めをかけるには戦争を止めるしかないと……。しかしお前は帝国軍三長官の一人、宇宙艦隊司令長官だ。お前が言ってはならぬ」
「……」
「今は改革を進める事が第一だ。改革で実績を上げてからの方が良い。あれもこれもでは全てが失敗に終わる可能性も有る。最悪なのはそれだろう」
お父様の言葉にエーリッヒ様が頷いた。
「そうかもしれません、しかしこの問題を放置する事は出来ません。改革と同じくらい重大問題です」
今度はお父様が頷いた。
「そうだな、しかし一つ間違えば反逆者と言われかねん危険が有る。バルトバッフェル侯爵の事を知らぬわけではあるまい」
「……」
「彼は皇族でありながら慎重論を唱えただけで排斥された。お前が例外だとは限らない」
お母様が頷いた。
「戦争を無くす方法は和平だけとは限らないでしょう」
「……エーリッヒ」
「いずれは、と考えていま
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