第四十一話 次なる難題
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488年 2月 17日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 エリザベート・フォン・ブラウンシュバイク
「どうでしたの、カストロプは」
夕食が終わった後、何時ものように皆でお茶を飲んでいたけどエーリッヒ様はちょっと元気がない。私が問い掛けるとエーリッヒ様は困ったような表情をした。訊いてはいけなかったのかしら?
「思いの外に状況は良くなかったようだな」
お父様の言葉にエーリッヒ様が“ええ”と答えた。
「酷いものです、カストロプ公は領主としての責任をまるで果たしていませんでした。あれでは領民達が可哀想ですよ。ブラッケもリヒターも怒っていますし呆れてもいます。私欲を貪る人でしたから領地は結構発展させているのかと思いましたがそうでは有りませんでした。無責任なだけだったのでしょう」
溜息交じりの声、少し疲れているのかもしれない。顔色もあまり良くないし……。
「カストロプはまるで中世ですよ、機械など何も使っていません。全部人の力で作業をしています。おかげで耕作可能な土地が手付かずで残っている。いえ耕作地がほんの少ししかない、そう言うべきでしょうね」
「……」
「おまけに土地が酷く痩せているそうです。だから小麦の収穫高も少ない。ブラッケとリヒターは農業の専門家ではありませんがその彼らの目にも酷いと見えたようです。今土壌管理の専門家を呼んで対策を考えてもらっています。それと農業機械を購入しました。カストロプに届くにはもう少し時間が掛かるそうです」
「やれやれだな」
お父様が呆れた様に言うとエーリッヒ様が頷いた。二人ともウンザリしている。
「でも何故カストロプ公は何もしなかったのかしら」
思い切って訊いてみた、良かったお父様もお母様も何も言わない。
「必要ない、そう思ったのだろうね。領内を発展させることにはあまり興味が無かったようだ。それよりは政府閣僚になった方が効率よく稼げる、そう思ったのだと思う」
エーリッヒ様の答えにお父様が溜息を吐いた。
「四千億帝国マルクだったな、カストロプ公の私財は」
「最終的には五千億帝国マルクを超えました」
「領地経営など馬鹿馬鹿しくてやっていられないでしょうね」
今度はお母様が溜息を吐いた。お父様もエーリッヒ様も同じ思いなのだろう、表情が沈んでいる。
「無理もありません。機械を使えば耕作地は増えますが帝国製の農業機械は品質が悪く故障が多いそうです。修理には時間もかかるし費用もかかります。かなり扱いは面倒なのでしょう。それに作物に多少の余剰が出来ても輸出は難しい」
「何故ですの?」
私が質問するとエーリッヒ様が困った様に笑みを浮かべた。お父様、お母様も同じような笑みを浮かべている。
「利益が出ないんだ。多少の量では輸送コストが高くなり利益が出ない。フェ
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