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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十一話 次なる難題
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ら証拠が有るかと聞いたのか……」
思わず唇をかんだ、そんな俺を准将が辛そうな表情で見ている。

「貴官は帝国に戻った方が良い」
准将を見た、辛そうな表情は変わっていない。
「ここに居るのは危険だ。捕虜がここに居るなど本来有り得ない、ブラウンシュバイク公がどういう意図を持ったのかは知らないが現状では貴官がブラウンシュバイク公の意を受けたスパイだと周囲には取られかねない。作戦の失敗は貴官の裏切りによるものだという証拠になってしまう」

「弁明の機会さえ小官には許されぬと」
自嘲が漏れた。
「シトレ元帥に貴官と会った事を話す、貴官が裏切っていないと言っていたこともだ」
「それを信じろと?」
「……貴官を騙すつもりなら危険だとは言わない。統合作戦本部に連れて行って捕えさせて終わりだ」

已むを得ない、予想以上に状況は悪い、同盟に留まるのは危険だろう。
「ローゼンリッターの処遇は?」
「分からない、上層部も決めかねているのだと思う。貴官は裏切ったのではないかと疑われてはいるが裏切ったと断定されたわけではない。だからこそ、此処でローゼンリッターの隊員に会うのは危険だ」
なるほど、俺だけではない、ローゼンリッターも危険だという事か……。

「出来る事なら貴官は帝国で仕官した方が良いだろう」
ブラウンとウィンクラーが驚愕を浮かべて准将を見ている。
「……小官に本当の裏切り者になれと?」
「そうだ、今のままではローゼンリッターは何も出来ない。貴官が帝国で仕官したとなればローゼンリッターは貴官を非難する事が出来るだろう」

ブラウンとウィンクラーが一瞬唖然とした後、そんな事はする必要が無いと口々に言った。そしてヤン准将に食ってかかろうとする。落ち着けと言って宥めた。
「小官一人で決められる事ではない、向こうには俺と共に捕虜になった仲間がいる。彼らの意見も聞かなければ……」
「酷い事を言っているとは思う、しかし考えてみてくれ」

ヤン准将が帰った後、ブラウンとウィンクラーが残ったが気まずい沈黙が落ちた。
「お前達も帰れ、俺もオーディンに戻る」
「ですが隊長、どうするのです?」
「ここでは答えられんな、ブラウン。リンツやブルームハルト達と相談してからになるだろう」

「もし隊長が帝国に仕官するようになれば……」
「戦場で出会うかもしれんな」
「……」
「その時は遠慮するな、お前達も俺もそんな事は許される立場じゃない」
「……」

あの男は、ブラウンシュバイク公は何処まで知っていたのかなと思った。状況は俺が想像していたより遥かに悪い。彼が俺に示したのは好意では無かったのかもしれない、現実を見ろという忠告だったのか……。いや、それも好意の一つなのだろう、現実を知ることが出来たのだから……。



帝国暦
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