暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはANSUR〜CrossfirE〜
Ep9迫り来る刻限〜Time limit〜
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だ。本当の姿は、健全な資料本だったんだ。だと言うのに、どうして“闇の書”などと言う禍々しいものに変わってしまったのか。
「これはちょっと許せないな・・・」
「ああ、いつかの持ち主の誰かが改悪した所為で、“闇の書”――“夜天の魔導書”は壊れ、破壊の力を揮うだけになってしまった」
考古学者の一族スクライアの人間であるユーノの怒りも良く解かる。俺とて自他ともに認める本の虫だ。こういう特別な、そして健全な書物を狂わせるとはとてもじゃないが許せん。アリアも「馬鹿みたいに強い力を得ようとするのは今も昔も変わらないのね」と憤りを見せている。
「ルシル。これ見てくれ。無限再生と転生機能の原因って・・・」
「どれ?・・・間違いないな。持ち主と共に旅をする転移プログラムと、破損データを修復するプログラム。無茶な改変の所為でこれらが暴走しているんだ」
どこの誰かは知らないが余計なことをする奴もいるものだ。もし時間を遡れるのなら、プログラムを改変した奴を見つけ出し、1発とは言わず、何発も殴り飛ばしているものを。今はもう死んでいるであろう犯人に殺意を漲らせながら、さらに詳しい情報を得るために調べ続ける。
「・・・おいおい、これは何の冗談だ」
「どうしたの? ルシル君」
アリアが俺の見ている資料を肩越しから覗きこんできた。
「これを見てください。持ち主に対する性質が、一番最悪な方へと改悪されているんです」
「どれどれ」
“闇の書”の信じられない情報が記載されている資料を、ユーノにも見えるように開いてみせる。
「わざとじゃないだろうな、これは。もしこれがわざとなら、改変した奴は天を突き抜ける馬鹿だな」
アリアもまた「これは何と言うか、酷いね」と呆れている。実際は酷いじゃ済まない。俺が差し出している資料に目を通しているユーノの表情が見る見るうちに険しくなっていく。
それはそうだ。なにせ、一定期間蒐集をしなければ持ち主を侵食していくと言うんだ。それを防ぐために蒐集を繰り返し、完成させたらさせたで今度は持ち主の魔力を、無差別破壊のためだけに延々と使わせ続ける。そのため、“闇の書”の主となった者には全て同じ結末が訪れることになる。
「つまり、自滅という、もっとも愚かな最期を迎えることになるんだ」
「これは本当に冗談じゃないね。守護騎士や彼らの主はこのことを知ってるのかな?」
「蒐集しても主を殺し、蒐集しなくてもまた同様に主を殺す・・・笑えないぞ、本当に」
これを知っているのなら、あんな誰かれ構わず襲撃するという強硬手段を取ってまで、蒐集を繰り返さないだろう。しかし話が話だ。蒐集しようがしまいが自滅の道の果てに向かうことになっている。ダメだ、ハッキリと答えが見出せない。
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