第六十一話 図書館でその十二
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「やっぱりそれって中田さんだけの気持ちでエゴなのよ」
「エゴ?」
「スペンサー大尉だってそうじゃない」
樹里は彼のことも話に出した。
「高代先生もね」
「アメリカ政府の命令を受けたり素晴らしい学校を建てるっていうのも?」
「アメリカのエゴでしょ、それって」
まずはスペンサーのことを言う。
「結局は」
「そうなるね」
「そうでしょ、それで高代先生も」
次は彼のことだった。
「確かに素晴らしいことだと思うわ、困っている人達の為の学校って」
「そうだよね」
「けれどそれでも」
「その為に戦うっていうのはね」
「やっぱり間違ってるわ」
こう言ったのだった、上城に対して。
「それはね」
「先生も間違ってるってわかってるわね」
「絶対にわかってるよ」
上城は高代のことがわかっている、彼がどういった教師であり人間かも。それで樹里に対しても答えたのである。
「そしてわかっていてね」
「あえてなのね」
「間違っているとわかっていても」
それでもだというのだ。
「先生も自分の願いの為にね」
「つまりエゴね」
「王さんはもっとわかりやすいけれどね」
富が欲しい、それはというのだ。
「あの人もエゴだね」
「戦うことを選んだ人は皆そうよね」
「色々な願いがあって戦い理由があるけれど」
「皆ね」
「うん、エゴだよ」
「エゴとエゴのぶつかり合いってね」
それはだった、人間のプラスの一面から見て考えると。
「酷いものだから」
「だから僕は戦いを止めたいんだ」
上城は樹里との話から自分の戦う理由を再確認した、まさにその為に戦っていることを自分でも理解したのだ。
その彼が言うのだ。
「やっぱりね」
「ええ、だから」
「勝つよ。そしてね」
「帰って来てくれるわね」
「うん、そうするから」
「待ってるから。帰って来たらね」
樹里は微笑んでその時の話をした。
「お家で美味しいもの作るからね」
「何作ってくれるのかな」
「鍋がいいかしら」
こう上城に言った。
「それがね」
「鍋なんだ」
「そうね、その鍋でもね」
ここで樹里は上城の好みを考えた、そして出した鍋はというと。
「すき焼きがいいかしら」
「すき焼き?」
「うん、上城君すき焼き好きよね」
「大好きだよ、昔から」
実際に彼の大好物の一つである、それで言ったのだった。
「鍋は何でも好きだけれどね」
「すき焼きもよね」
「うどんすきも鳥の水炊きも好きだし」
その他にもだった。
「あんこうも豚もね」
「ちゃんこね」
「ちゃんこってあれだよね」
「うん。一つじゃないから」
ちゃんこと一口に言っても様々だ、極論すれば力士が食べるもの全てがちゃんこであり鍋とは限らない。だがここでは二人は鍋に
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