第六十一話 図書館でその七
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「私は間違っているのでしょう」
「そのことはご自身でもおわかりですね」
「わからない筈がありません」
認識している言葉だった。
「私にしましても」
「そうですか」
「人を殺す手で人を導けるか」
「それについては」
「間違っているでしょう、ですが」
それでもだというのだった。やはり意を決した顔で。
「私は戦います」
「それでもですか」
「はい、学校を開くには何が必要か」
「お金ですね」
「まずはそれです」
何につけてもだった、まずこれがないとどうしようもない。この世の摂理はまずそれがあってこそだからなのだ。
「そしてさらに」
「土地ですね」
「はい、その二つに人も」
それもだった。
「私以外の優れた教育者の方々も」
「そうした子供達を教えられる先生達がですか」
「必要です」
今度は人だった。
「その全てがなければどうしようもありません」
「だからですか」
「私はその三つを手に入れる為に」
「戦い手に入れられますか」
「必ず」
何があろうともだというのだ。
「私は戦います」
「そうされますか」
「そして手に入れます、私の願いを」
「目的が正しければ手段は、というのではないのですね」
「そうした考えはありません」
目的の為には手段を選ばない、時としてそうした行動は卑劣極まるものに堕してしまう、だが高代の場合はどうかというと。
「目的ではなく」
「それとはまたですか」
「違いまして」
ではどういったものかというと。
「私自身が血に塗れようとも場所と人さえ言えば」
「そこで、その人達がですか」
「為してくれます、私一人がそうであろうとも」
「犠牲なのですね」
「私一人がそうなっても構いません」
それで罪に汚れようともだというのだ。
「一人がそうなろうとも多くの子達が救われればいいではないですか」
「ですか」
「貴方も神父様ならおわかりだと思いますが」
「確かに」
大石もその考えは否定しなかった、実際に。
「人の為に犠牲になるというのは」
「それはですね」
「主もですから」
十字架のキリスト、その人を見ての言葉だった。
「そのことは私は否定しません」
「では」
「しかし。それは非常に悲しいことです」
大石は咎める顔で高代を見て言った。
「この上なく」
「悲しいですか」
「はい、主もそうでした」
キリストを見て言う、ここでも。
「確かに犠牲になりましたが」
「それはですか」
「このうえなく悲しいものでした」
こう語ったのである。
「犠牲はそうなのです、ですから」
「私もですか」
「他に。必ず」
大石のその言葉にさらに切実なものが宿る。
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