初戦
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答えたカッセルに、笑いかければ、アレスは装甲車へと足を向けた。
「交代だ。食事が終了したら、装甲車のヘッドライトを消すように。闇夜じゃずいぶんと目立つようだからね」
言葉ににやりと笑い、カッセルは答えた。
「ええ。任せてください」
+ + +
月や星は分厚い雲に隠されている。
代わりとなる光源がない雪原では、十センチ先も見えない深い闇が広がる。
街灯もなければ、ただ聞こえるのは雪の音だけだ。
「ずいぶんと間抜けな奴ですね」
闇の奥から嘲笑うような声が聞こえた。
すぐに視線を感じて、男は言葉を止める。
だが笑いはすぐには止まらないようで、押し殺したような笑いだけが聞こえた。
敵の間抜けさに、我慢ができないようだ。
ため息を吐きながら、しかし、策敵部隊の隊長であるゲルツも口元の緩みを隠せなかった。
敵は陸戦に――いや、カプチェランカの戦闘に慣れていない。
この星で野営をするには、夕闇で装甲車を止めるのは遅すぎる。
ゲルツならば昼過ぎには装甲車を止めて、安全な野営地を探す。
暗くなった時の装甲車の明りは、あまりにも目立ち過ぎる。
その上、闇が深まれば満足に監視設備も設置ができない為、設置位置を深く考えることもなく、急いで設置しなければならない。
だから。
「気をつけろ。ここからは敵のレーダーがあるぞ」
設置した場所など遠くから見ていれば、位置がはっきりとわかる。
位置の分かった監視設備はもはや監視設備ではない。
罠かとも疑ったが、野営の準備をする者たちを観察すれば、どれくらいのレベルであるかは一目でわかる。小隊長と思しき若い人物の姿に、帝国軍の偵察部隊の面々は相手がただの新人であると判断した。
装甲車の明りではっきりと見えたよ。
思わず、ゲルツは教えたくなった。
ゲルツの部隊は慣れたようにレーダーを潜り、音も立てずに歩いていく。
降り積もった新雪が足音を消してくれる。
吹雪の音と視界に、襲撃はしやすく、防衛はしづらい。
その事を彼は身をもって体験することになるだろう。
生きていればであるが。
数メートルを歩きながら、ゲルツはレーザー銃を構えて、小さく笑った。
「カプチェランカへようこそ、新人さん」
悲鳴の夜の幕が明けた。
+ + +
「ああああああああ!」
悲鳴があがったのはゲルツの後方からだった。
最初に笑っていた男だ。
悲鳴のあがる方に目を向ければ、必死になって男が足を押さえている。
正確には、その足に食い込んだトラバサミをだ。
男が必死になっても、足に食い込んだ鉄の刃を引きはがす事ができない。
何とかしてくれとの叫びに、慌てて周囲の人間が男を助けようと、集
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