初戦
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の基地が出来るまでの間は自由に資源を採掘ができ、敵の攻撃の心配がないために、大型輸送艇を送る事ができる。
敵に新しい基地が出来れば振り出しに戻る。
それの繰り返し。
地図データを見ながら、アレスは不毛だなと呟いた。
戦略的には何の価値も見出せない。
この地を守り続けるのは、ただの意地の張り合い。
「戦争そのものが意地の張り合いなのかもしれないけどな」
誰にも聞かせられない愚痴だと思い、アレスは再び地図データに目を通した。
既にアレスのいる場所は安全圏内ではない。
何度か敵兵が確認された危険地帯だ。
過去に発見された場所と戦闘があった場所を点で表示させれば、さらに東に行くほどに点の数は増えていた。
その先に基地があると、クラナフ大佐は考えているようで、アレスもその点に関しては間違いないだろうと思う。
問題は。
「更に奥まで進むかどうか」
さらに東へ進めば、敵基地を発見する可能性は高い。
だが、敵基地へ二台の装甲車で突入するほどにアレスは奇特ではない。
「当初の予定通りに上手くいけばいいが」
それが上手くいかなければ、大人しく帰った方が良い。
冒険する時ではないと判断し、アレスは地図データの画面を消した。
装甲車から顔を覗かせれば、冷たい風が顔を襲う。
思わず顔を苦くすれば、光のない雪原で装甲車の二つの光源だけが見える。
それを頼りに、戻ってきた分隊員に食事をとらせる。
外ではせっかくのスープも冷める。
順番に装甲車の中で食事をさせながら、アレスは装甲車にもたれかかった。
「お先に食事をいただきました」
んと小さく頷くアレスに、近づいてきたカッセルは朗らかに笑う。
「どうですかね。上手くいきそうです、初めての策敵は」
「さて。無事に戻れれば万々歳だ」
「気があいそうですな。新任の隊員は士官学校出も兵卒も同じで、結果を求めるもんです。そういう奴はだいたい棺に入って帰ることになりますが」
「別にやる気がないわけではないけどね」
「やる気なんてどうでもいい。求められるのは結果ですよ、小隊長」
「軍曹が求めているものと、こちらの間にはずいぶん大きな隔たりがありそうだ」
「そりゃそうだ。こちらは無事生きて帰って孫を抱くのが目標ですからな」
「それは、こっちは抱きしめる恋人すらいない」
「お可哀そうに。ご紹介しましょうか?」
「そうだな。三十になってもいなかったら、紹介してもらおう」
「それなら互いに長生きしないといけませんなぁ。どうです、一つ。暖かくなりますよ?」
そう持ちあげたのは、ウィスキーが入ったスキットルだ。
「一口くらいなら部下に飲ませてやれ。あまり飲み過ぎないようにね、長生きをしたいのなら」
「了解です」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ