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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
幕間2 弓月兄妹と学ぶ〈帝国〉史
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接的なきっかけ――と習いました」

「中々慧眼だな。良く考えているよ。そうだな――じゃあその〈帝国〉と渡り合った二国について軽く触れて終わりにしようか」

「はい、御兄様」

「それではまずはアスローンからだな。
アスローンは先の〈帝国〉史でもふれたとおり、以前は南冥の磐帝国を宗主国と仰いでいたが、以後は独立した一国として〈帝国〉と渡り合いながら漸進的に南進と内乱、そして〈帝国〉との紛争を続けていた。
地図で見るとおり、その国土は〈皇国〉と比べると広大であるが、けして〈帝国〉や南冥の王朝に並ぶものではない。
アスローンについてはどの程度知っている?」

「〈帝国〉と国境を接していて、何度も戦争している事は有名ですね。
アスローン大半島と呼ばれているツァルラント大陸南西部の半島部を支配する国で大王が治めているのは先程習ったばかりです。
えぇとあとは――アスローン・モルトってお酒を代表に色々と〈皇国〉と交易を行っています」

「ん、そうだな。貿易などで〈皇国〉とも関係が深い。今、碧が言った通りのアスローン・モルトなどの嗜好品だけではなく、衣服や船の建材や黒石や鉱物なども輸出している。
代わりにこちらからは織物や民生用の船などが売れているな」
 この辺りは葵の専門である。花形部署配属だった筈が戦乱で色々と酷い事になっているが
「そして、大王が治めるというのもまぁ間違いではないが、抜けている点がある。
アスローン大半島は幾つかの王国として分割されており、そこから最大勢力の国王が大王として他王国を従える政治形態をとっている。
――まぁ外交を含めて中央政府としての役割は大王の下で一元化されているし、言葉や民族も殆ど同じだから〈皇国〉の大半は碧のいったような勘違いをしているようだがね。
まぁそれぞれ法制や行政制度は異なっているし、国民意識も完全に統一されているとは言い難い。だから戦間期には内戦が起きる事も珍しくない――最近は腕木通信の発達やら海上輸送能力の発達やらで早々に潰されることが多いようだが――簡単な触りのみとなるとこのくらいでいいかな」


「はい、お兄様。それとアスローンと一緒に戦っている南冥はどういう国なのですか?」
 葵はかるく顔を顰めて首を横に振った。
「あぁ、まず南冥と言う呼び方はあまり良くないな。元々の意味合いは蔑称だからな」

「そうなのですか?えぇと正式な名前は何でしたっけ?」

「今は凱帝国だね。ロッシナ朝――今の〈帝国〉とほぼ同時期に成立したらしい。
冥州大陸に存在し、帝国やアスローンと国境を接している。
幾度か王朝が交代している多民族国家だ。帝国とは敵対関係にあり、数度の国境紛争を起こしている……正直なところ、このくらいしか分からないな」
といって葵は肩を竦めた

「あら?
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