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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
幕間2 弓月兄妹と学ぶ〈帝国〉史
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に現在の西方諸侯領と〈帝国〉の農奴制といった〈帝国〉の基礎が築かれたといってもいいだろうな」

「西方諸侯領からさらに西進する事はなかったのですか?」

「アスローンと磐帝国――俗にいう南冥の二ヵ国。そして現在では北方蛮域と称される土地に住む民族達にぶつかったからな。
特にこの時期、磐帝国は王朝全盛期だった。大国としての意思統一がなされており、また諸民族を統合する為に巨大な軍備を有していた。そしてなによりアスローン諸王国の宗主国だった。
――故に〈聯合帝国〉軍は敗退した。これによってマクシノマス家の威信は揺らぎはじめた」
 黒茶で喉の渇きを癒すと葵は足を組み、滔々と説明を続ける
「余談だが、この時代のアスローン諸王国も内乱に勝利した事で精強な軍勢を有し、磐帝国の庇護を受けた大王の下で集権化が進んでいた。
この時代に大陸の有力国たちの現体制まで続く基礎がつくられたのさ――まぁこれは後にしよう。ここまではいいね?」
 慌てて緑は手持ちの帳面に筆をはしらせ、地図を見比べながら説明の概要をまとめる。
「えぇと、南冥の磐帝国が当時の〈聯合帝国〉相手に戦争できるほどの大国だったってことですね?アスローンはその庇護下で大王の権限が強化されたおり、これに同調して〈聯合帝国〉軍に抵抗した」

「うん、その通りだ。まぁこれのおかげで対〈帝国〉戦争が出来る状況になったと言われているな。分かりやすい“敵”があらわれた事で磐帝国を盟主とした防衛体制を周辺国家勢力は構築し、磐帝国に事実上併合されるような国家も少なくなかった。〈聯合帝国〉はこうした大規模国家とその衛星国を相手にしたことで膠着状態に陥ってしまい、200年以上続いた拡張を前提とした国家運営が出来なくなった。
だが、これに対応する事はマクシノマス家を中心とした中央政府にはできず。諸侯達はマクシノマス家に不満を募らせた。そして発生したのがヒルデップ新帝乱だ」

「新帝乱……という事はここで帝室の交代が起きたわけですね?」

「あぁ、その通りだ。マクシノマス家は断絶し、新たにハルトラント家のヒルデップ一世を皇帝とする〈聯合帝国〉が建国された。
この乱は皇紀前一六四年に集結し、〈帝国〉は拡大した領土の整備などの内政面に注力して最初の安定期を迎える。
この時期は、南冥でも内乱によって王朝の交代が起き、アスローンは南冥の支配下から外れて交易による発展を進め、現在の〈帝国〉領レンストールなどの島国と交易問題による紛争を起こしていた」

「この時代はまだロッシナ家は出てこないのですね」
 出された黒茶を飲みながら碧は帳面に筆をはしらせ、尋ねた。
「あぁ、当時はまだ本領の一貴族だった。彼らが頭角を現したのはこのヒルデップ新帝乱から約八十年後に訪れた東方への猛撃(シュトルム・ナッハ・オステン)
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