青い春
伍 エゴと誠意
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とかどうでもいいかもしれねえけど俺にとっちゃ大問題なんだよ一度でも勝たねえと勝ちなんかに意味があるとかねえとかわかんねえじゃねぇかよ俺の中の拘りが消えてなくならねえんだよお前のあの一球見た時に俺は少しでも期待しちまったんだこれなら勝てるかもしれないって
その期待の責任をとれよォー!!」
一息に言った日向はゼイゼイと息を切らしている。まくしたてられ続けた当人の真司は、圧倒されてその顔を引きつらせている。
ガタッ
そして、日向の気迫に応じたかのように、教室の隅で立ち上がった男が居た。
「そうじゃ碇ィ!偉そに上から見下ろしてんちゃうわ!」
藤次だ。真司を熱心に誘う日向の姿をずっと面白くなさそうに見ていただけだったが、日向の怒鳴り声に触発されたかのように席を立って真司に迫った。
「ワイはこんかい投げられますよ〜ってわざわざ見せつけて、『ワイは上手いけど、おのれらとは野球はせーへん』て、ナメるんもええ加減にしさらせボケ!そうやって必死こくワイらをバカにし続けるつもりか、エエ!?お前も必死こかんかい、せやないとワイがいつかお前を抜いた時にもお前は『練習してないから』とかなんとか言うんやろがえ!ふざけんなワレ、お前も野球してワイと勝負せぇやぁ!」
まるで今までのつれない態度に対する苛立ちをそのままぶつけられるような感覚に、真司は戸惑いを隠せない。
「そ、そんなぁ…あまりにも自分勝手すぎますよォ…」
「勝手なのは百も承知だそれを分かった上で頼んでるんだ!」
日向は真司の机をバン、と叩いて、眉間に皺を寄せた顔で迫る。
「お前の気持ちなんて知るか、お前は俺の為に野球しろォ!」
理屈も何もない。気持ちを剥き出しにして、
日向は迫った。
藤次も一緒になってグイって迫る。
「………………」
真司は助けを求めるように薫を見るが、薫は鼻歌を歌いながらそっぽを向いていた。
「……………」
これで最後というだけあって、日向も藤次も全く退く気はない。
「……わ、分かったよ…やれば良いんだろ、野球」
遂にこの一言が絞り出された。
この一言が、大きなうねりの始まりになる事を
この場に居る誰もが、知らなかった。
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