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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(後編)
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であった。
 かしゃん、と包丁が女の手から滑り落ちて、それきり、笑い声が途絶える。真っ赤になって倒れ伏す父、真っ赤になって立ち尽くす母。そして部屋の中央には、幸運にも、全てが終わってから意識を取り戻し、起き上がる娘。童女は一点の血の穢れもない、純白の身体―――それが、「アズ」。


                     *     *     *


「ねぇ、お母さん……お父さんは寝ちゃったのですか?」
―――そうね、起こしちゃいけないから……静かにしていましょう。
「よかった……お父さん今日は機嫌がいいんですね。今日はわたしもお母さんも、ぶたれずにすみそうです」
―――そう、ね……うふふ、お母さんもちょっと安心だわ。
「えへへっ。ねぇお母さん、一つおねがいしてもいいですか?」
―――アズがお願いなんて、珍しいわね。どんなお願い? 
「えっと……だっこしてもらっても……いいですか?」
―――アズはもうすぐ小学生でしょう……もう大きいのに甘えてはダメよ。
「けど……お母さんもお父さんもまっかなのに、わたしだけふつうのままだから……」
―――駄目よ。こちらに来ては駄目。汚れてしまうから。
「だって……わたしもお母さんと一緒がいいです!」
―――いい加減にしなさい!
「ひぅっ……うぇ……」
―――泣いてはダメよ。これからアズは強くならなくちゃいけないの。一人で生きていくために。
「ひと……り?」
―――ねぇアズ、お母さんと一つ、約束してくれる? そしたら……だっこしてもいいわ。
「は、はいっ! なんでもいうことききます! なんですか?」

 赤い手が、少女を引き寄せ、胸に抱く。触れた部分は瞬く間に赤に染まり、肌に穢れがしみ込んで、それでも、母と娘は幸福の絶頂にあった。


                     *     *     *


 凄惨な真紅の光景、その記憶が、アズの脳裏に完全な形でよみがえった瞬間、とどめの言葉が解き放たれた。

闇アズ
『―――もしあの時、あなたに勇気があったのなら、お父さんもお母さんも、死なずにすんだでしょうに!』

―――ぱりぃぃんっ……!

 アズの心臓が砕け散る音であった。

アズ
「ごめ……ん、なさい……」
闇アズ
『何ですか? 聞こえませんよ?』
アズ
「ごめんなさい……ごめんなさいっ! ごめんなさいぃっ……許して……ゆるして、ゆるしてゆるしてぇっ!」

 童女のように泣き崩れ、その場に崩れるアズを、闇アズサは包み込むように抱きしめる。

闇アズ
『赦されませんよ……だって、赦してくれるお父さんとお母さんは、もうこの世にいないんですから……だぁれも、あなたを赦してくれない……』
アズ
「いやぁっ、たすけて、だれ
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