デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(後編)
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、ひらひらとカードが舞い落ちた。ナイトがそれを拾い上げ、今度こそ厳重に封じて、光の粒子となし、御影石の瞳に吸収する。白獅子はアズにねぎらいの言葉をかけようと少女の顔を見上げて―――言葉を飲み込んだ。
背後で見守るナコ達には、アズの顔は見えない。しかし、少女の背中が、かすかに震えていることは遠目にもわかって、誰もが言葉を失った。
やがて、ナコが肘で委員長を小突く。
「行ってやれよ、委員長。今回は……あんたがいなきゃ、どうにもならなかったし」
少年が無言でそれを受け取って、アズへ向かって歩きはじめる。少年の姿を認めた白獅子が、アズを残して少年の方へ歩いてきた。
獅子と少年がすれ違う。すれ違いざま、白獅子がつぶやく。
『後は、頼んだ。少年。あまり遅くならないうちに、送ってやってくれよ』
「……まかせろ、白騎士」
ちょうど、アナザーデュエルを終えて戻ってきた時とは、正反対のやり取りであった。
ナコと二頭が引き上げていく。二人きりになっても、少年はアズの背後、すぐそばに立ちながら、震える背中に対して、何も言葉を投げかけない。こんなとき、抱擁して慰めるのが気の利いた男のやり口なのかもしれないし、ナコなら、もっと純粋な気持ちから、そうしたのかもしれない。
だとしても、全てを見てしまった自分がそれをするのは、何かが違う。少年はそう確信して、少女が落ち着くのを、互いの息遣いが聞こえるほどの距離で、ただ待った。
* * *
「その……落ち着いたか?」
「……はい。もう。情けないところをお見せしてしまって、ごめんなさい」
「そんなのは、いいけどな……別に迷惑でもないし。それより、俺の方も謝らないと」
「委員長さんが……?」
「デュエルピースのせいとはいえ……全部見てしまったからな。お前の夢、というか、過去を。あまり、人に知られたいものじゃない……だろ」
「それは……でも、やっぱり謝らないでください。委員長さんの声が聞こえなかったら、勝てなかったですし。それに……その、うまく言えないですけど……委員長さんなら、知られても、悪い感じはしないかなって……」
「小鳥遊さん……」
「そ、それで……その、委員長さん、一つ、お願いしていいですか?」
「ああ。何でも言ってくれ」
「なら、「アズ」とお呼びください」
「……え?」
「呼び方です。親しい方は……「アズ」と呼びますから。それに、お母さんにもらった大事な名前だから、委員長さんに使ってほしいんです」
「そういわれると……で、でもな、その、体面とか逡巡とか羞恥とかいろいろ……」
「ダメ……ですか?」
「あ、いや……」
「夢の中の委員長さんは、呼んでくれたのに……」
「う……」
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