デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(後編)
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* * *
少年が眼を開けると、再びアパートの中であった。夕焼けが照り映えていた先程とは違い、時刻は真夜中。窓の外は何もない闇。蛍光灯の熱を欠いたような光が、中途半端に室内を照らしている。
次は一体何を見せられるのか―――アズの元へたどり着くための糸口すら一向に見いだせない現状に、少年が焦燥を覚えたその瞬間、怒号が飛んだ。
『敬語を強要するなんて、すぐやめさせて!』
『うるさい! 躾なんだ! 口出しするな!』
『何言ってるの! 自分じゃ戻せなくなってるのよ!? いいわけないでしょう!』
父と母が激しく言い争っている。母の後ろに隠れるようにして、不安げな瞳のアズが、両親を見上げている。不幸にも、その姿が父親の眼にとまってしまう。
『お前のことだぞ! ちゃんと聞かんか!』
父はアズの頭を掴むと、母の影から引きずり出し、そのまま力任せに放り投げた。突然のことに満足に反応できなかったアズは、物体のように頭から床に叩きつけられ、後頭部をしたたかにぶつけた。
いっそのこと、脳震盪を起こしてひと思いに気絶してしまえば―――何もできず、ただその光景を見せつけられるだけの少年は、そう願ったほどである。しかしそんな消極的な願いすら、アズの記憶の中では叶えられない。不運にも意識を保ち続けている童女は、頭蓋骨に響き渡った激痛に身悶えながら、暴虐から逃れようと体を引きずる。
しかし、父はそれを見逃さなかった。這いずるアズの背中を足で思い切り踏みつけ、体重をかける。
『あ゛え゛ぇっ!』
肋骨と内臓をひとまとめに、自身の何倍もの体重で圧迫されて、童女はアマガエルのような高くおぞましい声を口から吐き出し、舌を突き出したまま四肢を痙攣させる。あろうことか、瀕死の両生類のような娘の様子に嫌悪感を覚えた父親は、童女の薄い身体を踏み抜くつもりで、さらに体重をかけた。とうとう声も出なくなり、白目をむいて口の端から血の混じった泡を吹くアズ。
娘を襲うあまりの惨状に、母がさらに狂い咲く。
『やめて! アズには手を出さないって言ったでしょう!』
母が父に掴み掛る。バランスを崩した父の足がアズの背中から離れ、童女の内臓が重圧から解放された。だが、それで打ち止め。夫婦の間には絶望的な体格差があった。むしろ、アズを解放させたことだけでも、母として殊勲賞ものであった。
『うるさい! どいつもこいつも俺をばかにしやがって!』
夫が妻の横っ面を、思い切り殴りつける。激しい暴虐の対象が、娘から母へと変わってしまったのだ。
『あっ!』
怒号と拳が飛び交い、妻が殴りつけられる音が響き渡る。その間に、何とか部屋の隅まで這い逃げた童女が、混濁した意識のまま
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