デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(前編)
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「……おはよう、小鳥遊さん」
校門のところで不意に背後から声をかけられて、アズは飛び上がりそうになる。声の主は男であったが、彼女に声をかけそうな異性など思い当らなかった。
振り向くと、眼鏡の少年が無表情で立っている。先日、担任教師の変死について彼女を問いただした、ファースト・プラムの委員長であった。朝の挨拶を向けられたのだと気付いて、あわてて腰からがくりと頭を下げる。
「お、おはようございます、委員長さん」
「ああ……」
委員長は短く返答し、表情を変えないまま校舎へ入っていく。その背中全体がクールな印象を与えてくる。見送るアズは、委員長の意図が読めずに目を丸くするしかなかった。
「なんだよアイツ……愛想ねぇなァ」
アズの背後から、諸星ナナコがぬっと顔を出す。どうやらアズと委員長のやりとりを見ていたらしいが、彼女も少年の態度の裏側を図りかねるらしく、怪訝な顔をしていた。一方のアズは、ナナコの姿を認めると、花が咲いたように笑顔になった。
「おはよう、ナコちゃん」
「おはよ、アズ。てか……その「ナコ」っての、ホントに定着させんの? なんつーか、そういう略し方されたことないし、イヤにカワイイ系すぎて名と体が矛盾するってか……」
「……イヤですか?」
上目遣いに表情を曇らせるアズ相手では、とても逆らえない。
「あ、いや……す、好きにすればいいって……」
「はいっ」
上機嫌に昇降口へ向けて歩き出すアズ。ナコとしては、委員長以上にアズの器の大きさを測りかねているのであった。
* * *
数日が経過しても、アズを危ぶんで近寄ってこようとしないファースト・プラムの空気は、やはり大きくは変化していなかった。だがその中にあって、アズとごく普通の友人同士として会話を交わし、屈託なく笑顔を振りまくナコの存在は大きい。次第に、アズたち二人の様子を窺うような視線が向けられることが多くなっていることに、当人たちは気づいていないのだが。
しかし、そんな二人も、ただ一人、明確にアズを対象として観察する視線があることには気づいていた。委員長の視線である。もちろん常に見ているというものではないのだが、授業中や教室を出るときなど、アズがふと気づくと委員長の眼鏡のレンズがこちらへ向けられていることが多い。やはり、レンズの奥にある視線の意図までは読めないクールさを保ってはいたが、それでも、敵意とも厚意とも違う正体不明の感情が向けられていることに、自然とアズの注意も引き寄せられる。
「委員長のヤツ、結局何がしたいのかね」
昼休み、購買部の菓子パンを二人でかじりながら、ナコがこぼす。
「この間は問い詰めるようなこと言っといて…
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