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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第3話「英雄超克」(前編)
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小鳥遊さんの住所も教えるから、最悪見つからなければ家まで届けてくれ」
「人使いの荒い……はっ、フォロー入れるくらいなら、最初からあんなコトすんなっての」

 ショートヘアの少女、諸星ナナコは、椅子から立ち上がり自分の鞄を担ぐと、空いた左手でアズの鞄を乱暴につかんだ。


                     *     *     *


 ともかくその場を離れたいという気持ちが強すぎたのか、アズが忘れ物に気付いたのは、自室に逃げ帰った後だった。戻ろうにも、その気力がわくはずもない。脱力して途方に暮れていたところ、玄関のチャイムが鳴った。
 来客は、彼女の級友を名乗る少女。アズの後ろの席に座っていたというのだが、実のところ彼女には全く覚えがなかった。だが、今日は一日下ばかり向いていたのだ。覚えがなくて当然であった。

「ほら、あんたの鞄。ったく、ダッシュ決めるのはいいけど後先考えろっての」
「す、すみません……」

 玄関口でアズの胸に鞄を押し付けて、諸星ナナコは不平を口にした。アズは萎縮し、やはり下を向いて、謝罪の言葉を述べたきり押し黙ってしまう。それを横目で見て、ショートヘアの少女はため息を一つ。そして突如、こともなげに切り出す。

「あんたさァ、明日ってヒマ?」

 予想外の言葉に、アズが思わず顔を上げる。この時ようやく、まともに二人の視線が交差した。

「明日……ですか? 土曜日……特になにも……ありませんけど」
「そ。じゃ、10時に白鳩駅の南口な」
「え……えっ?」
「んじゃな。遅れんなよ!」

 有無を言わさず、玄関のドアが閉められてしまう。呆然と立ち尽くすアズが一人、残された。


                     *     *     *


 こうして、場面は翌日、白鳩市内の遊園地に移り変わる。さて、ここからが今回の物語の核心的なテーマになるのだが、突然、今までまったく知らなかった文化世界に放り込まれてしまった人間は、いかにして自我を保つのだろうか。
 ここでの、未知の文化世界に放り込まれた哀れな少女はもちろんアズであり、そこへ彼女を放り込んだのは諸星ナナコ。自我を保てるか否か、少女の精神力が試されている。
 教室内で孤立してしまった転校生を休日に連れ出す―――諸星ナナコの行為自体の目的は想像しやすかろう。アズが淡い希望を抱いて待ち合わせに向かったことも事実だ。だがその先に待っていた展開は、アズがまるで想像していなかったものだった。少女は目の前の光景に、ただただ目を丸くすることしかできない。
 というのも―――

『さあみんな! このピンチのピンチのピンチの連続に! お姉さんと一緒に《ウ・ルトラマン》を呼んで! せーのっ!』

‘ウ・ルトラマーン!’
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