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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(後編)
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はなく、窓一つない取調室に放り込まれることになる。
 もちろん真実を話すことはできないが、まともに言い訳できる訳もなかった。それどころか、刑事が質問し、怒鳴り、なだめすかす声が、全てまともに耳に入ってこない。遠方のざわめき程度にしか、脳が認識してくれないのだ。さらにひどいことに、知覚の先、思考力も相変わらず休眠状態であった。ただ、自分が立て続けに二人の命を奪った事実が、耳の奥でのたうちまわっているようで、だから聞こえないんだ、とどうでもいい部分にだけ思考が働いた。
 結局、昨日より遅い時間まで取り調べは続き、ようやく少女は解放された。何を聞いても要領を得ないこと、「遺体に二度も連続で遭遇して大きなショックを受けた」という一応の説明がつくこと、そしてなにより、人体切断という相当の荒業を、少女が行ったとするのは無理があることが、解放の決め手となったのだ。
 送りのパトカーを降り、重い足を引きずって、ようやく自室の扉までたどり着く。バッグから鍵を取り出したところで、ろくに力の入らない手からするりと鍵が抜け落ち、アパートの廊下に転がる。拾おうとして身をかがめた時、扉の前に立つナイトと、目が合った。

『おかえり……遅かったね』
「ない、と……」
『アズ、話を……』
「ごめんなさいっ!」

 叫ぶなり、アズは鍵を拾い上げて手早く開錠し、ナイトを残して部屋に滑り込む。後ろ手に施錠して、荒い息のまま玄関にへたり込んだ。廊下に残された白獅子は、アズの息遣いが聞こえる扉に向けて、なおも語りかける。

『アズ! 君のせいじゃないんだ! 君は力のコントロールを学ぶ前の状態だった! それを私が利用して戦わせた……! 全て私の責任なんだ! 君が背負うことじゃない!』
「それは……本気で言っているんですか……?」

 扉越しに弱々しい返答が届けられる。好機―――と見たのは完全に白獅子の誤解だったが、ここぞとばかりにナイトは声を張り上げた。

『もちろん本気だ! 君に無理を言って戦わせたことが間違いだった! 君は全て忘れて、元の生活に―――』
「むり……ですよ」
『無理なんかじゃない! 学校だって、明日からやり直せば』
「むりですっ!」

 ぼろぼろに弱った声帯から無理やり声を上げたせいで、アズの喉に鋭い痛みが走る。だが、もう止められなかった。

「わたしは人を殺したんです! 二人も! 誰が何と言おうとわたしが斬った! わたしの剣で! わたしが!」
『アズ……』
「昨日の子……ずっと言ってました……「登校する」って……制服も私と同じで、もしかしたら同級生だったのかもしれない! それを考えもせず! あとかたも……のこさず……」
『アズ……!』
「今日の先生も、ナイトも言ってたじゃないですか! デュエルピースさえ無くなればいい先生だった
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