デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(後編)
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のかも……でもわたしはそんなことも忘れて……怒りにまかせて……強くなったなんて勘違いして……! いや……もういやですっ! わたし……もう、死にたい」
その後は、すすり泣く声だけが、扉を隔ててかすかに漏れ続ける。もはや超常の力に関わったこと自体が、アズにとって後悔の対象だった。それを悟ったナイトは、言葉を失う。自分の声すら、アズを追い詰める怒声なのだとすれば、彼女のためにできることはもう何も残っていない。
『アズ……本当に済まなかった。もう私は君の前には現れない。約束する。だから……早まったことだけはしないでほしい……アズ……さよなら』
やっとのことでそれだけの言葉を選び出し、すすり泣きの向こうへそっと投げかけて、ナイトはアパートを後にした。廊下に残された、御影石の瞳からこぼれ落ちたしずくがいくらか、月光に煌めいて、人知れず嗚咽に震えた。
* * *
とぼとぼと石垣の上を歩く白獅子。無関係の少女の心に、一生消えないであろう深い傷を残してしまった。新米デュエルペットである彼にとって、初めての試練であり、失態だった。そもそも、彼女を巻き込みたくないと心の表層では考えながら、どこかにパートナーとして共に戦ってくれるかもしれないという淡い期待を抱いていたからこそ、連戦を強い、こんな結果を生んだのではないか? 重い思考が回転し、さらに重量を増す悪循環。比例して獅子の足取りも重くなっていく。
『あーあ、とうとうやっちゃったのね、ルーキーくん?』
不意に頭上から投げかけられた声に反応して、顔を上げる獅子。彼の乗っている石垣の上方、電信柱の頂上に、桃色のペルシャ猫のシルエットが月明かりに映し出されている。きらりと光る両の瞳の真紅の宝石に、獅子は見覚えがあった。
『あなたは……なぜここに?』
『なぜって、大先輩がわざわざ激励に来てあげたのよ? 敬いなさいな』
ペルシャ猫の影が電柱から飛び降り、するりと石垣の上に降り立つ。新たに物語に登場する、柘榴石の瞳を持つデュエルペットの姿が、街灯の光で鮮明に浮かび上がった。その動きの一つ一つ、全てに優雅の一語が当てはまる。自身の美しさをはっきりと認識し、際立たせるために計算された動作であった。
ぱちり、とウィンク一つ。決め台詞は愛嬌たっぷりに。それが彼女の信条だった。
『キラキラ・アイ・ラブ・ガーネット、参上ってね?』
<第2話・了>
■ あとがき―――あとのわるあがき
デュエルにこぎつけるまでが意外と長い、と嘆いた前話と比べて、さらにデュエル前が長くなっている今回。もうこういうものか、と諦念が押し寄せてくる。とはいえ、今回はデュ
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