デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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指が動きを止める気配はなく、なおも奥底への侵入を続けていく。アズの慎ましやかな深奥が雄の欲望にまみれた指先で蹂躙されるのは、もはや時間の問題であった。なによりも恐怖が一気に増大して、アズの全身が小刻みに震え出す。
(たすけて……ナイト……!)
昨日、危機に陥った自分を助けてくれた獅子に、心の中ですがるアズ。しかし、密閉された車両の中に、獅子が颯爽と現れるなどと、そうそう期待できるものではない。
痴漢の爪先が、とうとう深奥を隠す茂りに触れた―――瞬間、電車が停止し、一拍遅れてアズの眼前の扉が開く。今しかないと直感し、アズはホームへ向けて思い切り飛び出した。車両から離れる瞬間、侵入していた指に下着が引っ掛かり、生地が引き伸ばされる感触があったが、勢いそのまま不埒な指を振り切り、両足がホームの白線の上に着地する。だが勢いがありすぎて、前につんのめり、転んでコンクリートに両の膝小僧を打ちつける。両足に走る痺れと焼けつくような痛みも構わず、這うようにしてアズは白線の内側、ホームに備え付けられたベンチのところまで逃げ延びた。
嫌悪感から解放され、荒い息のまま、ベンチを支えに立ち上がる。とっさに、後ろを振り向く。閉まるドアが両側から押し寄せる、その丁度狭間に、スーツ姿の男。人相を確認する前にドアが閉まり切り、ちょうど窓と窓の間に隠されてしまったが、閉まる直前、男の口元が、いびつにゆがみ、さも楽しそうに笑っていた様子が、アズの網膜に飛び込んだ。
冷たい息を吐きながら立ち尽くすアズを残して、列車がホームを出ていく。自分に向けられた生々しい性欲の発露としての、かの男の笑みが、アズの脳裏に焼き付いて離れない。転んだときにすりむいた両の膝小僧から血が滴り、白のソックスにしみ込んで赤の模様を描いた。
* * *
アズが飛び降りたのは次の駅だったので、白鳩まであと二駅の距離があった。早めに出たおかげで、たった今ホームに滑り込んで来ようとしている次の列車に乗れば、始業前に到着できる十分な時間的余裕がある。だが、アズはホームのベンチに腰かけたまま、その列車を見送ってしまった。列車の扉が開いた瞬間、目に飛び込んできたスーツ姿の群れ。もはや酢飯ではない、炊き上げられた欲望の塊から、いくつもの手が自分の性に対して伸ばされ、引きちぎろうとしている光景が脳裏に浮かんだからだ。米酢の殺菌作用はもはや意味をなさず、ただ据えた雄のにおいに作用して鼻を突き刺すだけ。自分の膝から滴る血の匂いのほうが、幾分かはましだ。
実際、列車の扉が開いた瞬間、アズは立ち上がって乗車しようとしたのだ。しかし、どうしても膝から下は動いてくれなかった。それどころか、腿から下の体温をまるで感じられない。脚に血が通
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