デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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にかかる力をその右手でついでに支えた。
ふぅ、と車内で人知れず溜息を吐くアズ。目的地である白鳩までたった三駅。この乗客のほとんどは白鳩で雪崩のように降りていくはずだが、それまでに二度、ドアの開閉と乗客の乗り降りがある。自分の胆力では、どちらの駅で電車からはじき出されて取り残されるような気がした。さっそく大都市のテンポに置いてけぼりを喰らったようで、こんな調子で大丈夫だろうかと嘆息した瞬間、臀部に違和感が走って、アズは眼を見開いた。
最初は、何が起こっているのかわからなかった。何本かの硬い肉の筋が、ミミズのようにうねりながら、下着越しにアズの尻肉の上を這い回っている。正体不明の肉筋に薄い布越しに臀部を撫で繰りまわされる、強烈な嫌悪感がアズを打ちのめし、彼女の全身が凍りついたように動かなくなってしまう。満員電車の中。すし詰めの状態では他人の手や衣服、鞄が当たることもあるだろうが、明らかに意図的な肉筋の動きは、間違いなく偶然の接触ではない。だとすれば―――臀部を這うミミズの正体は、人間の指でしかありえない。おそらく、彼女の背後、スカートの下から無理やりに腕差し込まれた腕に生えた、5本の指が、中枢神経の発した電気信号に従って、うねり狂っているのだ。
その根源にあるのは、汚れた雄の欲望。その行為の名は間違いなく―――。
(これ……痴漢……!?)
確信した瞬間、尻肉を手のひらで思い切り掴まれた。一瞬、アズの息が止まった。椀型に盛り上がった肉を、五指で絡めとるような動きで揉みしだく。一点、冷たく硬い感触が当たっているのは、痴漢の指にはめられた指輪だったが、当のアズにそんなことを気にする余裕はない。
逃げようとして、どこにも逃げられないことにすぐ気付く。自分の目の前には列車のドアしかない。鞄が押しつぶされるほどの圧力を背後からかけられていて、これ以上前に進めるわけがない。かといって、臀部をまさぐる腕をつかみあげて逆襲するどころか、悲鳴を上げる勇気すらも湧いてこなかった。動揺と、恐怖と、嫌悪と、羞恥―――それらが全て混ざり合って、結局のところまともに思考ができないまま、金縛りにあったかのように全身が硬直している。
突然、尻肉から掌が離れた。アズの脳が安堵の感情を準備した時、指先が内股に滑り込み、閉じた太腿を内側から割り広げるように上下に撫で始めた。アズが抵抗の意思を示さないのをいいことに、卑劣な行為はエスカレートしている。
「……っ!」
アズの喉の奥が引きつり、口からかすかな空気音が漏れ出す。あろうことか、内股を摩擦していた指先が、下着と尻肉の隙間を発見し、爪先を滑り込ませたのだった。さらに指先が強引に割り入り、下着と皮膚の間に隙間ができて、空気が流れ込む冷たい感触が、アズの恐怖を煽りたてる。
(うそ……このままじゃ……)
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