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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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のはやはり、黒髪に黄色の肌、黒の瞳のいかにも東洋人的な顔だった。
 寝巻を解いて制服に袖を通し、女学生らしく見えるよう細部までチェックし、外形を整える。白鳩高校は、「それほど校則にうるさい学校ではない」との前評判を耳にしていたにもかかわらず、アズは時間をかけ、学生らしさの演出状態を念入りに点検した。そうしないと、元に戻れないような気がしたのだ。
 それだけチェックを重ねても、出発すべき時間までまだ30分以上ある。鞄の口をしめて、持ち上げる。もう出発するつもりだった。30分早い程度なら、学校自体は空いているはず。今この瞬間だけは、この部屋は獅子が去った場所なのだ。新生活の一日目を学校で過ごして帰宅すれば、とのアズ独りの部屋に戻っているはず。だからこそ、今は早く出てしまいたかった。
 玄関へ向かおうとして、学習机の上の両親の写真に目がとまる。アズは一瞬だけ目を伏せると、向き直り、無言で一礼して、部屋を出た。


                     *     *     *


 昨日よりも早い時間。駅までの道は誰もいなかった。あの白い竜はもちろん、それを使役していた女学生も、竜に屠られてしまった幾人もの亡骸も。昨日彼女がデュエルをした場所は、竜の炎による焦げ跡が生々しく残っているはずだが、警察のブルーシートがすべてを覆い隠していて、確認することはできない。あちらこちらに警察が張った立ち入り禁止の黄色のテープがかすかに事件をにおわすが、捜査員の姿はない。当然だった。ここにはもう証拠になるものは残されていないのだ。
 アズはなるべく前だけを見るようにして、足早に進む。大通りに出た。しばし進むと、駅が見えてきた。電車の行き来する音が、妙に遠く感じる。思わず、駆けだした。あれに乗ってしまえば―――戻れるのだと。


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 列車のドアが開く―――絵に描いたように満員であった。この近辺で最大の町、白鳩市へ、つまりシティへ向かう上り列車、加えて朝のラッシュ時。考え合わせれば必然なのだが、都市に住まう経験に乏しいアズは、人間の押し寿司に圧倒されてしまう。しかし、乗り過ごすわけにもいかない。どのみち、しばらくはどの列車もこれと同じのはずだ。明日からも毎日これに揺られることになる。慣れなければならない。心の中で謝罪を述べながら、背中から強引に列車のドアに分け入り、自分も酢飯役に加えてもらう。
 けだるそうな声の出発アナウンスが流れ、列車のドアが閉まる。左手に下げた中身のない鞄が、自分の腹と閉まったドアに挟まれ、ぺしゃんこに潰れてしまった。しかし、そんなことを気にする間もなく、必要に迫られて空いている右手でドアに手をつき、背後からの圧力に耐える。ゆっくりと列車が動きだし、体
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