デュエルペット☆ピース! 第1話「転校生ふたり」(後編)
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ート姿の捜査官に揺り起こされた時、少女は元の姿に戻っており、あの女学生も、手乗りサイズの獅子も、跡形もなく消えていた。すべてが夢だったのかと疑ったが、周囲をあわただしく駆け巡る警察官たちと、行き来を繰り返す何台もの救急車が、空襲を連想させるあの凄惨な光景が、まぎれもない現実であったことを嫌でも彼女に確信させる。
捜査官の話によれば、事件現場付近にいた人間の内、彼女が唯一の生存であるらしかった。警察署で、捜査官たちは彼女に有力な情報をせがんだが、何をどう話せばいいのか見当がつかず、最初は泣きはらすことしかできなかった。もちろん涙の理由は、第一に自身が生きながらえたことへの安堵であったが、傍目には、死体のいくつも転がる地獄絵図を目にしたショックからの涙と映る。もちろん、ショックを受けていること自体は本当なのだが。捜査官たちは、まずは彼女を休ませることを優先した。
毛布を掛けられ、リラックス効果があるのだというハーブティーを手渡される。女性警官のいたわりに頭を下げながら、少女は考えを巡らせた。あの女学生が白竜を使役して襲い掛かってきたこと、人語を話すミニサイズの獅子に助けられ、デュエルで苦闘の末に竜を葬ったこと。昨日までの自分がこの話を聞けば、正気の沙汰ではないと思うだろう。これを正直に話したところで信じてもらえるわけもなく、それどころか無から犯罪者を作り出す錬金術師のごときこの国の警察相手では、あらぬ疑いをかけられる可能性もある。幸い、外見上今の自分は事件に巻き込まれた被害者の立場にいる。余計なことは言わず、その立場を維持するが正解。
その後、改めて向けられた捜査官たちの質問に、「死体を見つけ、恐ろしくなって必死になって逃げている途中、転んで気を失った」と答えた。有力な手がかりを期待していただけに、わずかに落胆の色を浮かべる刑事もいたが、反面、そんなところだろう、と予想していた向きが強かったようで、儚げな少女の言葉を疑う者はいなかった。それから各種調書の作成に付き合わされるうちにとっぷりと日も暮れ、パトカーで自室まで送ってもらうと、もう10時を回っていた。
「はぁ……結局、転校初日から登校できませんでしたね……」
誰もいない部屋で、彼女は独りごちた。すべては朝の一時のことだったはずであるが、途方もない経験をしたとしか思えない。どこかでまだ夢と疑う気持ちと、夢であればと願う気持ちが残っていたが、同時に、あの獅子にもう一度会いたいと思う心もある。
「そういえば……獅子さんの名前、きいてませんでした。わたしも名乗ってない……」
『グラナイトだ』
不意に、背後から凛々しく澄んだ青年の声。振り向くと、部屋の真ん中に、彼女のすね程度の背丈しかない、小さな白獅子が立っている。その瞳は、黒の宝石。蛍光灯の光を照り返して、美しく輝いて
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