デュエルペット☆ピース! 第1話「転校生ふたり」(後編)
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*
「ねぇ、お母さん……お父さんは寝ちゃったのですか?」
―――そうね、起こしちゃいけないから……静かにしていましょう。
「よかった……お父さん今日は機嫌がいいんですね。今日はわたしもお母さんも、ぶたれずにすみそうです」
―――そう、ね……うふふ、お母さんもちょっと安心だわ。
「えへへっ。ねぇお母さん、一つおねがいしてもいいですか?」
―――アズがお願いなんて、珍しいわね。どんなお願い?
「えっと……だっこしてもらっても……いいですか?」
―――アズはもうすぐ小学生でしょう……もう大きいのに甘えてはダメよ。
「けど……お母さんもお父さんもまっかなのに、わたしだけふつうのままだから……」
―――駄目よ。こちらに来ては駄目。汚れてしまうから。
「だって……わたしもお母さんと一緒がいいです!」
―――いい加減にしなさい!
「ひぅっ……うぇ……」
―――泣いてはダメよ。これからアズは強くならなくちゃいけないの。一人で生きていくために。
「ひと……り?」
―――ねぇアズ、お母さんと一つ、約束してくれる? そしたら……だっこしてもいいわ。
「は、はいっ! なんでもいうことききます! なんですか?」
(そうか―――あの時、お母さんは血だらけの手でわたしを抱き寄せて―――)
―――生きなさい。どんなにつらくても、どんなにくるしくても……生き続けなさい。
(あの日―――二人が亡くなった日、お父さんの返り血と、お母さん自身の血、両親の血にまみれて、それでもわたしは―――だっこしてもらえて、うれしかった)
―――生きなさい。どんなにつらくても、どんなにくるしくても―――
(あの時冷たくなっていくお母さんの腕の中で―――わたしは確かに、いのちを受け取った―――だから、わたしは―――!)
―――生きなさい、アズ!
* * *
少女の生体電流がその電圧を増し、超常の力となって放出され、彼女の周囲に稲妻のエネルギーとして実体化する。一筋、二筋、次第に放出される稲妻が数を増し、とうとう少女の右の拳が握りしめられた。網膜の捉えた光が脳で像を結び、青空が映しだされる。自分が仰向けに倒れていることがはっきりと認識できた。
アズ
「はァっ……ごほぉっ」
身体中の痛みと血しぶきの混じる咳き、それでも、彼女は生きていることを実感した。まだ、血が出るのだ。それは心臓が動いている証。全身の筋肉を伸縮させ、よろめきながらも立ち上がる。地獄の苦痛の中で、左手に握られた手札は、何度もこぼれ落ちそうになりながら、結局一度も彼女の手を離れてはいなかった。それが、母との約束を守ったしるしのように思えて、安堵すらこみ上げる。
ナイト
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