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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第1話「転校生ふたり」(前篇)
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 この世のものともつかぬ不可思議な光景が、今この瞬間、少女の目の前に広がっていた。

 その時点の彼女は、明日からの新しい高校生活への期待と不安とで、胸を躍らせている普通の少女に過ぎなかった。家庭の事情で突然始まってしまった一人暮らしと転校。暗く考えても仕方ない。新生活を、普通に楽しめばよい。そう決意を固めつつ、六畳一間のアパートの窓から、星空を見上げる。それは、自分自身の心を慰める行為であったが、夜空に流れる光の筋を見つけて、思わず哀しみも忘れ、窓を開けて身を乗り出した。
 流星。高校1年生の少女がこれを見れば、願いを捧げたくなるのも道理であろう。せめて、明日からの自分の生活が幸多いものとなるように。きらびやかな装飾の類や、素晴らしい恋人や、副次的な願いは多くあれど、まず第一に三度繰り返し願うべきは、ただ一つ。

「友達が、できますように」

 彼女がそう唱えた瞬間、閉じられたままのまぶたを光が貫通し、視界が真っ白になる。驚いて彼女が目を開くと、軌道を変え、彼女のもとへ一直線に突進してくる流星が、すでに彼女の目前に迫っていた。
 衝突の瞬間、彼女は白く光り輝く竜の姿を見た気がした。


                     *     *     *


―――じりぃぃぃぃんっ

 少女は、やかましく鳴り響く目覚まし時計に反応し、布団から這いずり出した。あくびを噛みながら、音源を少々乱暴に一打し、鐘を止める。普段は心行くまで寝続けるのが信条の彼女であるが、本日からはそうもいかなかった。なぜなら、今日をもって彼女は、新たに白鳩高校へ転入するからである。のんびりしたところのある彼女も、転校初日からの遅刻をよしとするほど、度外れてはいない。
 靄のかかった意識そのまま、四つん這いになって洗面所へ向かい顔を洗って、ようやく頭がはっきりしてくる。ついでに歯を磨いてしまい、朝食とどちらが先にすべきだったかと、少しの間思案して、無益だとその問いを却下する。
 台所へ向かい、彼女の膝程度の高さしかない小型の冷蔵庫を開けてみるが、朝食になりそうな食材がなかった。ここ数日の食生活に計画性が欠如していたことを、改めて後悔する。テーブルの上に転がっていた食パンに、生のままオレンジマーマレードを塗りたくり、朝食と称して胃袋に収めた。
 寝巻を脱ぎ、新しい制服に袖を通す。白いブラウス、紺のブレザー。胸元のリボンがアクセントになって小気味良い。スカートの丈も、以前の制服より少し短く、少々気恥ずかしい。なにしろ以前の制服が型通りのセーラーだっただけに、自分に洒落っ気が出たような気がしてむず痒い気分になる。
 通学用に買った手提げ鞄を持ち上げる。重量はほぼゼロであった。教科書の類は今日支給される手筈なので、手帳と筆記具しか入っていない。それが、新
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