彼は一人怨嗟を受ける
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作を機械的に繰り返し続ける。
参列による一定面への波状突撃。
統率のとれたその動きにより敵は徐々に後ろに流されていく。
徐晃隊の訓練では倒れるまで繰り返させた。身体に染みつかせるために。
そして倒れても繰り返した。反撃を喰らって誰か倒れても同じ動きが出来るようにと。
命令伝達の簡略化、行動の単純化。
戦場では声が完全に届くとは限らない。
ならば聞きなれた、戦場で鳴るはずのない音に反応させればいい。本来は訓練での統率の為にしか使うつもりは無かったが、思いついたまましてみたら上手く行ったようだ。
しかし今回は範囲が狭いからこそできるだけだ。広かったなら音が届かず動きに乱れが生じてしまう。
幾分か続けると相手が圧されて趙雲隊との間に大きな空間が出来た。これで張遼隊が突撃してきても対応しやすくなっただろう。
そのまま合図を繰り返していると一人の敵が突出してくるのが視界に映り、普通の突撃の合図を一つ、長く鳴らした。
「そのまま押し込み続けろ! 中央、道を開けろ! 華雄が来た! 俺が行く!」
なんなのだあれは。
我が兵が簡単に押し込まれている。一部の乱れもない完璧な攻撃によって。
この音を出しているのはあいつか。あれを止めねばこのまま流されてやられてしまう。
「私が奴を倒し血路を開く! 全軍、修羅になりて周りの敵を蹴散らせぇ!」
言うが早く駆けると、黒い衣服を纏ったモノが男だと気付いた。劉備軍の将ならば黒麒麟徐晃か。
「そこを通してもらうぞ徐晃!」
その男も私に気付いたのかこちらに向かい駆けだした。
接敵後、戦斧を袈裟に全力で振り降ろす。もはや様子見などしない。時間がないのだから。
奴は剣をゆらりと頭の上に掲げ、剣ごときで受けるつもりと見えた。そのまま叩き折ってやろうと思った瞬間――目の前から奴が消えた。
視界の端、自身の真下に徐晃の姿を捉え、咄嗟に斧から片手を放して相手の突き上げられた拳を受け止めたが、引きずられるように身体が浮く。
そのまま奴は流れるような動作で次の行動に移っていた。
斧を無理やり引き上げ刀身でギリギリ蹴りを防御するが、浮いた身体は衝撃を緩和することが出来ずにそのまま吹き飛ばされた。
「猛将華雄。投降しろ。お前じゃ俺は抜けない」
たった一度の交差でこちらに勝った気でいるのか、徐晃はすっと目を細め、剣先をこちらに突き付けて言い放った。
「抜かせ賊将。私には待っている友がいる。守らなければいけない主がいる。意地でも抜かせてもらう」
不可思議な動きに合わせるほうが不味い。ここは反撃もさせないよう攻め続けなければ。
「やれやれ。戦場で笛の音を聴くとは思いませんでしたぞ」
彼の合図は敵味方どちらの意識も持って行った。戦場で笛の音が鳴る
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