彼は一人怨嗟を受ける
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普段の飄々とした態度もなく、そこにいるのは必死で自分を抑えている将の姿。
「……すまん張遼。私は出るぞ」
「あかん。ここで出たらうちらが不利になる」
「なら誰が月様の誇りを守るのだ! 勝った後で弁解するのか!? あの方の想いが万人に伝わるのを待つのか!? 今ここで守らなければ意味がないだろうが!」
言い放つと張遼は悲痛な面持ちをして俯いてしまった。それでも、きっとこいつは止めてくるだろうから構わず続ける。
「ここで月様の誇りを守らなければ私たちは勝っても勝ちきれない! なぁ、張遼! あの方が貶められて、それを見過ごして、何が臣か!」
「せやけど負けてしもたら月さえ守れへん!」
「だからお前がいる!」
私の言葉を聞いた張遼が息を飲み、心底驚いた顔をした。張遼は頭が悪くないから、きっと私の言っている事の全てを理解しただろう。
「お前は虎牢関に引け。私は月様の誇りを守る、お前と呂布は月様自体を守る」
そうすればいい。こいつが虎牢関にいればいいんだ。呂布と張遼がいればまだいけるだろう。
「華雄、お前――」
「皆まで言うな。これは私のわがままだ」
そうだ、我が兵達をも犠牲にすることになる。私の為にいつも命を賭けてくれるバカ共を道連れにしてまで私の忠義を貫き通したいというわがままだ。
「私はバカなんだ。わかってくれ」
私の瞳を見て心を感じ取ってくれたのか張遼は少し微笑み普段の調子に戻った。
「はは、華雄はホンマにバカやなぁ」
すまない張遼、素直に言えずに心の中で謝るが、
「まあ、こんなバカほっとけへんうちも大馬鹿もんや」
続けられた言葉に一寸思考が止まる。
「おい、張遼――」
「黙って聞き、うちらがすることは下策や。ただ確かに譲れへんもんの為に戦わなあかん時もある。打って出るで」
お前まで戦うのは……ダメだ。そう言おうとしてもビシリと人差し指を私の顔の前に立てられ、口を閉じるしかなかった。
「ただし! あのクソ女ぁぶちのめしたらさっさと虎牢関に一緒に引き上げる。倒しきれんと旗色悪くなっても一緒や。追撃に対する殿はうち。うちの二つ名、知っとるやろ?」
「……すまん。もし私に何かあったらお前は一人ででも虎牢関に引いてくれ。それと、ありがとう張遼」
張遼まで巻き込んでしまった事に後悔の念が湧いたが、同時に自分のわがままに付き合ってくれる友に感謝と歓喜の想いも溢れる。
もし、万が一私が取り残された時はお前だけでも生きてくれ。戦場では何が起こるか分からないのだから。
「わかった。その時はほってでも引くで。後で恨むなや。しかし華雄、水臭いわぁ。全部守って洛陽で美味い酒おごってくれたらええねん」
「約束しよう。どんな店でも連れていってやる」
そう言ってにやりと笑ってみる。張遼もにへらと笑い返す。
「お
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