彼は一人怨嗟を受ける
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題やってるご主人様のいう事を聞いて、立派に関を守ってるんだ。偉いよね、忠犬華雄。ご主人様が悪者だとも知らずにさー」
次は泣き真似をしながら張コウは言った。しかしどの口が言うのか……袁家の者なら分かっているはずだろう。
「落ち着け、華雄」
ふいに張遼に手で制される。掌に若干の痛みを感じたので見ると、私の握りしめた拳から血が滴っていた。
「間違ってないならあたしに反論できるはずだよねー。それもできないなんて結局はご主人様が悪いって気付いてるんじゃないのー? あ、そっかぁ! それでも愛してほしいから見ない振りをしてるんだね! 犬の鏡だ! 素っ晴らしい!」
ころころと表情を変え、しかし口角を吊り上げて心底楽しそうな様子。こんな下卑た奴が月様をバカにするか。
「それにしても董卓は卑怯者だね。後ろに隠れて自分ではなーんにもしない。民を助けることもせず、兵を助けることもせず、聞くだけ見てるだけ。いや臆病者か。ここに来てないってことは袁紹様と言葉を交わす勇気もなかったんでしょ? 自分が悪いから責められるのが怖かったんだ。うっわぁ、やっぱり臆病者もついちゃったー!」
張コウはそのまま身体を丸めてげらげらと笑いだした。
ここまでバカにするのか……何故あの優しい方の誇りが傷つけられなければならないのだ。
私が言い返したいのを未だ我慢していると、笑いを堪えながら身体を起こし、大きく息をついてから再度語り出した。
「はぁー……おもしろ。袁紹様が会ったこともないのがいい証拠。結局は他人を利用して、隠れてうまい汁だけ吸って生きていくしかしないクズじゃん。いいんだよ、そんな主に仕えなくても。ねえ、華雄ちゃん」
にやりと笑って告げられた言葉に私の堪忍袋の緒は遂に切れてしまった。
「貴様、言わせておけばぁ!」
「あれ? 人の言葉話せたんだ。ご主人様の悪いところを指摘されて必死の弁解? それとも間違いに気付いた?」
「董卓様はそんな方ではない!」
「今更必死に弁解しようとしても同じだよ。どうせ皆気付いちゃってるんだからさ。なんならあたしたちを倒して自分たちの間違った正義を証明してみたら? ほら、わざわざ倒しやすいように部隊も近づけてあげるから。それにちょっとだけ待ってあげるよ」
侮辱の言葉が返って来て、張コウの部隊はゆっくりと関の手前まで近づいて来た。しかも部隊の兵ですら私たちが出てこないと高を括っているのか先程の張コウの言葉に笑いあっていた。
「張遼」
「我慢せい」
「無理だ」
「それでもや」
隣に佇む同僚の方すら目を向けずに言うと、全て言い切る前に悉く否定された。もはや私は自身を抑える事が出来ない。
「月様をあれだけ侮辱されて……黙っていろというのか!」
「あれが挑発やってわかるやろうが! うちかて腸煮えくりかえっとるわ!」
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