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誰が為に球は飛ぶ
青い春
参 手本
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鼻で笑った。

「鈴原に投げて打っての大活躍をしてもらう為に今日は来たんだよ。あ、少し力入れて投げてもいいですか?」

日向は頷く。真司はうん、と背伸びをしてから、説明を始めた。

「まず鈴原は、テークバックが大きすぎ。腕の円運動の弧が大きすぎて、ボールを放す時に腕が体から離れすぎちゃってるんだよ。これじゃあ同じ動きを続ける…つまりストライクを投げ続けるのは難しいよ」

そういって、悪い見本として、腕をぶん回して一球投げてみる。

「あ、藤次にそっくりだ。」

健介が声を上げる。その場で見ていた藤次以外の全員が同じ感想を持っていた。
真司は藤次の投げ方をコピーしてそのまま投げ込んだのだ。

「むっ…」

藤次の口数がどんどん減っていった。

ーーーーーーーーーーー

「いいかい?次は…」

真司の投球指導は優に20分を越していた。
律儀にメモをとった光のノートには、項目が6つも並んでいる。ちなみに、指摘されてる本人の藤次の頭はもう既にパンクしている。

「…よし、これくらいで言いたい事は全部かな。一つずつ欠点を頑張って潰していけば、僕なんかより体の力は強そうだし、きっと良いピッチャーになれるよ。」

真司はそして、借りていたグラブを返して、室内運動場から出ていこうとする。

「待った!」

その真司を間髪入れずに呼び止めたのは、真司の球をずっと受けていた日向だった。

「…一度、君自身の投げ方で、力いっぱい投げてみてくれないか?」
「…ええ?別に僕が投げたいから来たわけじゃ」
「お願いだ」

日向は有無を言わせない雰囲気を出す。
味方がエラーした時にもこんな感じを出す事は無いのに、そのメガネの奥の視線がやたらと鋭い。
野球部の面々が少し驚き、身構える程だった。

「…じゃあ、一球だけ」

仕方なさそうに真司は室内運動場に戻り、グラブをはめ直す。
ボールを手に取り、こじんまりと振りかぶった。


ーーーーーーーーーーーーー

スッと上がった足。捕手に向けてピタリと半身の姿勢に。力感も無いがブレも無い。

その半身の姿勢のままで、上げた足を踏み込んでいく。グラブをはめた左手を投球方向へ伸ばし、右手を肘から巻き上げていく。

足が着地し、前から後ろの体重移動と、半身の姿勢からの体の横回転が一つの動きになる。

そのフォームは、美しかった。


ーーーーーーーーーーーーー

「パン!!」

真司の投げた球が、日向のミットを叩く。
野球部員たちは呆気にとられていた。
その投げた球は、130キロは出ていた。
傾斜の無い普通の足場、ただの運動靴、よれよれのジャージという格好、



何より体育の授業以外にロクな運動もしていないというの
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