四幕 〈妖精〉
3幕
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エルはフェイを、フェイはエルをまじまじと見つめる。
「……フェイは、フェイリオなの? エルの妹のフェイなの?」
「お姉、ちゃん……エルお姉ちゃん?」
互いの最後の疑念にとどめを刺すように、ヴェルが手帳から一枚の写真を出し、屈んでエルに差し出した。
「〈妖精〉の〈温室〉収容後2ヶ月の撮影です。この子に見覚えはありますか」
「………………フェイ、だ」
ルドガーもエルから写真を借りて見る。両脇からアルヴィンとレイアが覗きこんできた。
診療台らしきベッドに寝かされ、濁った青の手術着の人間がずらりと少女を囲む。
「彼女を研究した」というヴェルの言を絵にした光景だった。
全身に無数の管と計器を繋がれた女の子の寝姿は、本当に妖精のようだった。
「〜〜っフェイぃ!!」
エルが飛ぶようにフェイの腹に両腕を回した。
フェイはエルを受け止めたものの、エルを見下ろしてそれ以上に動かない。動けないほどに愕然としていると傍目にも分かった。
「パパが、フェイリオにはもう会えない、って…ホントにそうで…でも、フェイリオ、生きてた…っ、生きてたんだねっ」
「……キモチわるくない、の? フェイ、お姉ちゃんより大きくなっちゃったんだよ? 髪だって目だってこんな、変わっちゃったんだよ?」
「何で? だってフェイはフェイでしょ? エルの妹のフェイリオ」
「そう、だけど……ホントに、イイの?」
「だからイイって言ってるじゃないっ。そりゃ、お姉ちゃんより先にオトナになっちゃったのは、ちょっとくやしいけど。でも! フェイだからゆるしてあげるっ」
「お姉ちゃん……っ」
フェイは膝を突いてエルと抱き合った。まさに感動の再会である。
「水を差すようで悪いが、一番の問題がまだ残っていてね」
姉妹が揃ってビズリーを見上げる。
「ヘリオボーグを出た後も、彼女に〈妖精〉の力が健在であることだ。仮に、国家を転覆しうる威力の兵器が、特定の個人のためにしか動かないとしたらどうなると思う? 特定人物にしか操作できない、ではなく、特定人物のためにしか兵器が自ら動こうとしない時だ」
それはつまり、兵器に自我があるという意味だ。兵器に愛された人間のためなら、兵器は世界を滅ぼすことさえするかもしれない。
「〈妖精〉が隔離され、人との接触を禁じられた最大の理由がそれだ。〈妖精〉が特定の個人を愛せば、世界はその者の手の中にあるも同然だ。ゆえに隠した。何者にもその強大な力を悪用させぬために」
「悪用ねえ……確かに断界殻が
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